沖縄伝統の木造船「サバニ」 最年少職人が文化を繋ぎ続ける理由

 

サバニがつなぐ3世代のストーリー

 浦添で生まれ育った邊土名さん。ルーツは大宜味村とは言え、幼少期に遊んだ記憶もなく、大人になってからも「ルーツ」であること以外に所縁はなかったが、人生の歩みを進めるたびにその「ルーツ」の存在こそが自身の中で大きくなっていった。

「私の家系は先祖代々、大宜味村で生活していましたが、父が3歳の頃に一家で八重山開拓移民として石垣島へ渡りました。私自身は、父が引き揚げた後に本島で生まれ育ちましたが、31歳の時に、機会に恵まれ石垣島で働き始めます。その石垣島に『祖父を団長とする約350名が開拓した村』があることを知りました」と、初めて自分のルーツを意識し始めた邊土名さん。

「それからサバニの魅力に触れ、私が師事した吉田師匠も、同じく大宜味の人々が開拓した隣村に住んでいました。私も村で生活をして造船の技術を学んでいく中で、大宜味出身の先輩方の故郷を想う愛に背中を押され、大宜味村で独立開業することに決めました。運命めいた流れを感じています」

 まるでサバニの存在が、邊土名さんにルーツを遡らせてあげているかのような人生である。

「いま私がサバニを仕事にできているのも、先人が知恵と文化を繋いでくれたおかげです。この仕事をしていると、ご年配の方々が皆サバニの思い出を生き生きと話してくれます。その度にこれは紛れもなく一つの文化なんだと実感します。過去の思い出として消えていくのではなく、現代に活躍する船として存在していくことが文化を継承していくことに繋がる。これがサバニを造り続けるひとつの意義なのではないかと思います」

 造船だけでなく、塩屋湾や周辺の海にてサバニを使ったアクティビティを提供している。その姿に、地元の人たちはかつての懐かしさを重ね、若い世代は新鮮な楽しみを与えられている。

「将来的には次の世代に引き継いでいくことが目標です。一人でも多くの方にサバニの魅力を知ってもらえるよう今後も活動を続けていきたいと思います」

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