【戦後76年 慰霊の日】問われ続ける表現のあり方 映画のなかの沖縄戦②

 

経験していないことの表現が問われる

 平良さんは映画表現の特徴を「“没入”という体験」と強調する。「映画館で見る場合は特にそうです。今は配信とかでたくさん見られると思いますが、上映しているのであればやっぱり劇場で見て、存分にその世界に入り込むのがいいんです」

 沖縄戦や戦争を巡る映画作品について「何が描かれて、何が描かれてなかったのか。それが本当なのかどうかという判断をどのようにするのか。こうした問いはいつの時代の作品にも常につきまとうものなんだと思います」と述べる。

「塚本晋也監督は映画『野火』(2014年)で戦争を体験してない世代が戦争をどう語り継ぐのか、ということを問いました。『経験していないことをどう表現するのか』というのはこれからもずっと立ちはだかるテーマなんだと思います」と語り、「もしかしたら、経験をしていないことによる認識の“ズレ”が別の新たな視点をもたらして、傑作が生まれる可能性だってあります」と付け加えた。

 かつて沖縄で起こった出来事の理不尽さは、実際に経験をしていない身では想像もできないことなのかもしれない。映画はその理不尽さに向き合うため現実に補助線を引いたり、考えるための視野を広げたりする重要な手段になりうる。
 無理をしてまで惨たらしい表現に対峙する義務があるわけではない。が、自分が立っているこの地でどんなことがあったのかを知ることで、これから目を向ける未来の景色が違ったものになるかもしれない。1本の映画を見る前と見た後で、世界の見え方は変わる。

 慰霊の日という沖縄独自の特別な日をきっかけに、いずれかの作品に手を伸ばしてみてほしい。追悼の念も込めながら。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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