【戦後76年 慰霊の日】問われ続ける表現のあり方 映画のなかの沖縄戦②
- 2021/6/23
- エンタメ・スポーツ
沖縄戦をダイジェストで俯瞰して見る
『激動の昭和史 沖縄決戦』(岡本喜八監督、1971年)は約2時間半と長尺ながら、沖縄戦をダイジェスト的に俯瞰できる作品だ。小林桂樹、丹波哲郎、仲代達矢などの錚々たる俳優陣が日本軍の将校を演じ、若き日の加山雄三や田中邦衛も出演者に名を連ねている。
「ひどい目にあった沖縄県民を描くのはもちろん、というより、右往左往する32軍司令部の人たちのむちゃくちゃっぷりが印象に残る映画です。それで、公開当時は『住民じゃなくて、軍の動向ばかり描いている』という批判もあったようですが、10・10空襲の前から32軍司令部の自決まで網羅しているので、沖縄戦を俯瞰して見るには良い映画だと思います」
この作品を監督した岡本喜八は娯楽性の高い作品も多数撮っている。『沖縄決戦』は沖縄戦を主題としながらもどこか笑ってしまうようなコメディータッチの描写と、ドライで容赦ない描写が混在し、戦争を娯楽作品として表現する矛盾をそのまま提示しているかのような映画だ。
「情緒だけで終わらせない、身を持って戦争の空気を体験した感覚が画面に反映されていると思います」
ただ一方で、平良さんは岡本作品が「大好き」であることを前置きしながらも、「『沖縄決戦』については史実を基にしていて、自分が住む土地のことなのでやはり作為的な部分はちょっと気になってしまう」と指摘する。
例えば劇中には、戦後に生き残った沖縄県民を象徴するかのように幼い子どもを映し出すシーンや、米軍の戦車が近づく中でおばぁがカチャーシーを踊るシーンもある。
「さすがにそこまでやられるとちょっと情緒が過ぎると思ってしまいます。好きな作品だけに、こういうモヤモヤした気持ちはどこに置けばいいのかと感じることもありますね」
余談ではあるが、今現在劇場公開中で話題の『シン・エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督は岡本喜八を敬愛しており、『エヴァ』やその他の作品には、この『沖縄決戦』も含めた岡本作品の表現を踏襲したオーマジュが随所に埋め込まれている。