廃業は前向きだ!コロナ時代のビジネス修正を オンラインセミナー詳報

 
沖縄ニュースネット
「前向きな廃業」を笑顔で語り合う(左上から時計回りに)島袋さん、福井さん、野中さん、浦崎さん

 コロナ時代のビジネスの軌道修正の一つとして「廃業」を前向きに捉え、考えるオンラインセミナー「次の挑戦のための廃業という選択」(主催・Startup Lab Lagoon)が5月29日、開催された。

 出演者として福井寿和さん(株式会社イロモア代表 )、浦崎共行さん(古着屋SCLAP・JUMBLE経営者)、島袋豊さん(不動産事業者)の3人を迎え、それぞれの経験と目線から「前向きな廃業」について意見を出し合った。

 進行役はStartup Lab Lagoonの野中光さんが務めた。

「自分のプライドを捨てたところで何も失わない」

 福井さんは青森県内でカフェなど複数の飲食店を経営していたが、コロナウイルスにより客足の低迷を機に全ての店舗を会社ごと清算したという。 その時の経験をまとめて投稿したページが134万PVを記録し、日本中で多くの共感を生んでいる。


<全店舗閉店して会社を清算することに決めました> https://note.com/aomorio/n/nd4264eabe912

 福井さんは、廃業を決断できた理由を「本当に大切なものと向き合い、従ったから」と語る。

 自身の考え方を「経営者視点」と「個人視点」の2つに分けて考えた。

 経営者視点では

「この赤字が続けばいずれ倒産するのは分かっている」

「コロナ収束時期が分からず、今後も他業界に波及する不況を考えると撤退した方が良いのでは」

「従業員が(接客などに)感染リスクの不安を感じるなどの中、続ける意味はあるのか」

 と考える一方、個人の視点としては、

「せっかくここまでやってきたのに」

「今の地位がなくなる」

「閉店したら周囲に何って思われるだろうか」

 などの葛藤があったという。

 これら双方を比べた時に「このまま経営を続けると失うものや迷惑をかけることがある」が「プライドを失ったところで、自分がもやっとするだけで、誰にも迷惑をかけない」と判断、会社の清算に至った。

 「『自分のプライドや地位』と、『今まで支えてくださった人』のどっちを守るんだと。自分の心の声に真摯に向き合いました」

 今後は経験も踏まえて「店を閉める人や倒産する人の助けになりたい。(事業を)辞める選択肢もある。長い人生、多少つまずいても笑い話にできればいい」と“前向きな廃業”を後押ししていきたいとし、「引き続き飲食業に携わっていきたい。所得や仕事の幅、スキルアップのきっかけなど(東京などと比較した)地方が直面する差をなくすことに取り組んでいきたい」と、地元に力を注ぐ考えだ。

未来が楽しみ「返済の労力を考えたら終わった方がいい」

 母親が28年前に始めた古着屋の事業をルーツに、那覇市内で「SCLAP」「JUMBLE」を経営する浦崎さん。

 3月以降、コロナの影響で売り上げ下がり始めて「怪しいな、どうしようかな」と悩み始めた矢先、家賃や人件費で手元から一気に100万円が飛んだ。「これ来月も100万円減るな」。

 もしもこの月間100万円の損失が翌月に80万円になったとしても、累計すると最終的には400万円ぐらいになるのではないか、どちらにせよこれから不況になるだろう、そう思った。

 「400万も500万も借りて、これから返していくって労力考えたら、終わった方がいいな」

 こうして浦崎さんは実店舗での営業をやめる決断をし、ウェブ店舗での継続を選んだ。

 セミナー冒頭で「めちゃめちゃ前向きな話で、明るく話ができたらと思う」と話していた浦崎さん。もともとITやイノベーションなど、未来を見据えたビジネスの在り方に関心が高く、従来通りの事業では「5年後にはなくなるのでは」と考えていた。

 「今は明らかに未来に対する楽しみを感じている。この時代、未来がどこにいくのか分からないから、第二第三の人生選択も考えていた方がいい。第一の人生だけ考えるのはリスクが高い。いくつも夢を持って一つずつ進めていたから上手く転んだのかなと思う。廃業も次のステップになる」

 浦崎さんはこう投げかけた。「未来は自由じゃないですか?」

パラレルワークが奏功し「毎回結構やる気マンマン」

 島袋さんが「最初の廃業」を経験したのは、きっと人より早かった。大学在学中に「友達が集まる場所を作りたかった」と始めたバー。2年後の物件の契約更新の際、更新せずにあっさり廃業したという。「気軽に始めたし、閉める寂しさはあったが、悲しくはなかった」

 以後、島袋さんはフットワーク軽く、食堂や不動産投資、ゲストハウス開業などの新規ビジネスを展開しながら、状況に応じて廃業をしながらかじ取りをしてきた。現在も一棟貸しの宿の準備をしているが、コロナの影響を受け「とってもキツい」と本音を漏らす。しかし、島袋さんからは悲壮感を感じない。

 「転職したり、事業を閉めたり開けたりと経験を積んでいくと見えるものがある。ある事業を辞めるとしても、売却先を探しながら運用するなどができる。死ぬほど痛い目にはあっていない。精神的につらいときはあるが、あとあと楽しい思い出になれば、全ては自分の身になっている」と前向きだ。

 仕事を複数走らせる「パラレルワーカー」的な働き方も、島袋さんのモチベーションを高止まりさせるのに有効だったという。

 「ある事業が落ち込んでいる時に、別の事業が精神的にも収入的にも支えになっている。(新しいことを始める時は)毎回結構やる気マンマンですよ」

質疑応答クロストーク 挑戦した人にしか味わえない苦み⇒楽しさ

 第二部では、それぞれの質問に対して3人が答えていく方式だった。いくつか抜粋する。

Q.なぜこんなにも前向きになれるのか

福井さん:そっちの方が楽しい

「落ち込んでいることを考えていたら頭が痛い。楽しいことを考えた方が精神衛生上良い」

浦崎さん:車運転

「車の運転をしたら前に進むしかないんですよ。バックミラーを見ながらバックするのって大変じゃないですか?時間はやっぱり進んでいくので、前を向くしかない。前向きになるのはそういうことかなと」

島袋さん:やっぱ楽しいから

「苦い思いも経験したこと含めてやった人にしか味わえない楽しさがある。あの時のつらいことって、酒飲みながら振り返えると泣けるぐらい楽しいよ。挑戦しなかったらその苦みも味わえなかった」

Q.もしも自分の子どもが同じような挑戦をしたいと言ったら

福井さん:応援するけどしないふり

「全力で応援する。しかし、挑戦する人って自信満々で鼻が長くなっている。応援しているが『親に言っても理解してもらえない』みたいな環境を敢えて作ることで、良い意味でのブレーキになると思う」

浦崎さん:挑戦がいい

「絶対に応援する。挑戦すること自体がいい。助けてって言われたなら助けようと思う。経験するのが一番いい」

島袋さん:薦める

「応援します。めっちゃ楽しい人生を送ってほしいと思っている。一緒にいろんな遊びをして(子どもが楽しい人生を送れるよう」鍛えている」

Q.廃業に悩んでいる方にメッセージ

福井さん:お金は何とかなる、心に正直に

「辞める人の多くはお金がネックで決断できない。しかし、お金のことは何とかなる。あらゆる経営者が同じことを言っている。それよりも心に正直に、この事業を続けたいのかどうかで判断してほしい」

浦崎さん:失敗はした方がいい

「失敗は小さくでもどんどんしていった方がいい。失敗しないと引き際も分からない」

島袋さん:したいと思ったらその時すぐに段取りしよう

「お金もなくなって心がズタボロになるか、そうなる前に計画的に辞めるか。ここにいるメンバーは前のめりに廃業して次に向かいたいという人。ズタボロになる前に早めに手を打つ方がいい」

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長濱 良起

長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。2019年に県系移民などをつなぐウェブメディア「One Okinawa」創設。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(東洋企画)

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