県内企業8割が後継者不在 沖縄の事業承継問題(下)
- 2021/3/23
- 経済
「借金を全部引き受ける」という経営者感覚
「事業自体が上手くいってないから、収益を上げられていないからちゃんとした経営者になれる人材が育たない。沖縄は儲かってる所が少ないから」
こう語るのは県内で食品の卸業・加工業の会社を経営する男性だ。経営が厳しい状況にある中小企業では、そもそも「後継者をどうするか」という悩みすら出てこない。社内の人間関係も含めて、後継者に悩んでいる会社は「ある程度は上手くうまくいってる所と言っていい」という。
その上で経営者目線で、事業の引き継ぎについて以下のように述べた。
「儲けていない事業は次に継がさないし、大前提として赤字で継がせることはできない。会社の代表、経営者になるということは『借金を全部引き受ける』ということと同義だ。この見方で経営に臨めるかどうかという感覚も必要になってくると思う」
重くのしかかる相続税・贈与税
この経営者男性が事業承継のもう1つの大きなハードルとして挙げたのは、重くのし掛かってくる税金の問題だった。
「ある程度事業が続いてて資産を持っていてそのまま継ぐことになると、そこそこの利益を出していなければ、下手したら相続税などで全部資産がなくなる可能性もある。そうなると、引き継いだ時に借金だけ残っているということもよくある」
帝国データバンクの調査でも、「相続税・贈与税などの税金対策」は苦労したこと/しそうなことの両方に回答として挙げられている。企業からは「現状制度では中小企業の事業承継は非常に困難」「税金による資金減が事業継続に支障をきたす」などの声が上がっており、税制の見直しを求める意見が多いという。
「例えば、ものすごく儲かっているような良い会社でも、税金対策のために意図的に会社の価値を落としたりするケースもある。事業が上手く推移していても、長期スパンで考えないと、いざ引き継ぎという時に大変なことになる。こうしたことを考えると、税制のあり方についてはまだまだ見直す必要があるでしょうね」(水城支店長)
復帰時創業者たちの岐路
水城支店長は、事業承継問題が沖縄で特に深刻とされるのは「本土復帰のタイミングで創業が多かったというのが1つのポイントとしてある」と指摘する。
「例えば2代目が3代目に引き継ぐのであれば、自分が見てきたことやされてきたことを踏まえてある程度はスムーズにいくだろう。しかし、初めての承継となるとノウハウもなく難しい部分がある。加えて、『そもそも継承していくべき会社・事業なのか』ということから悩みどころなのかもしれない。コロナ禍という現状もあるので尚更」
こうした現状も踏まえて、解決の糸口を見出すとするとすれば承継の手法について「選択肢を増やすこと」だという。
「今後は家族や子どもが継ぐという流れはどんどん減っていくし、既にそうした傾向は強まっている。事業継続を考えるのであれば、後継者を従業員の中から見出したり、自分の会社の価値を踏まえた上でのM&Aも検討するなど、視野を広く持つことが重要だ」