県内企業8割が後継者不在 沖縄の事業承継問題(上)
- 2021/3/22
- 経済
M&A、外部招聘の高いハードル
2018年以降に事業承継した県内企業約280社で、先代経営者と後継者との関係性をみると、2020年の事業承継では「内部昇格」による引き継ぎが38.2%で最も高く、前年よりも3.5ポイント増加した。続いて多いのは「同族継承」で32.4%だ。一方で、経営者を外部から招く「外部招聘」については10.3%に留まり、数値も低下している。
「外部招聘が右肩下がりというのは沖縄に特徴的な傾向の1つ。現在は外部から経営者を呼ぶことが珍しくなくなった中、時代の流れに逆行しているようにも思える。近年はM&Aも選択肢の1つとしてあるが、こちらも沖縄は多くない」と水城支店長。
外部招聘による引き継ぎは、大規模企業では経営戦略上の合理性に照らし合わせてスムーズに行われることも多いが、中小企業の規模感でなおかつ家族・同族経営だとどうしても抵抗感が生まれてしまう。
「抵抗感は徐々に払拭されてきてはいますが、やはり“自分の会社”という気持ちがある。特に沖縄の場合だと、外部招聘やM&Aに県外の人や企業が関わった場合には『安く見られているのではないか』とか『買われてしまった』みたいな思いを多少持ってしまうこともあると思う」(水城支店長)
先述した経営者の男性は2代目だ。男性は事業の引き継ぎ方法の違いについて「看板を残すか、血縁を残すかという選択になる。ちょっと前から今後M&Aが増えるという話も結構聞いてはいるけど、親族・同族でやってる県内企業にとってはやはりなかなかにハードルが高い気はする」と話す。
「自分の感覚だと、2代目までは先代の創業当時の時代感や苦労も肌で感じて見ているから、感覚が多少分かる。でも、3代目になると共有できる感覚がかなり減ってしまう。この部分の乗り越え方、対応の仕方で承継のあり方が分かれるのかもしれない」
「子どもに苦労させたくない」
近年は特に、県外大手企業などの参入が相次いでいることもあり、地元でやってきた中小規模の企業は資本力で「全然歯が立たない」状況だ。「実際、頑張ればまだ多少は続けられるくらいの所でも、先を考えたら子どもに『苦労させたくない』と言って2代目で事業をたたむ人もたくさんいる」(経営者男性)
ちなみに、県内企業413社の後継候補の属性調査では「子供」が半数近い45.3%に上ったが、前年から4.7ポイント低下している。次いで多かったのは33.2%の「非同族」で、こちらは前年から4.9ポイント高くなっており、後継候補の属性については事業承継の脱ファミリー化を考える傾向もみられる。
◇(下)に続く◇