誰にどんな価値を提供するのか 沖縄観光の「質」向上に必要なこと(2)

 
本当北部の自然(今帰仁村)

北部テーマパークは「生きてる実感」味わう場所に

 下地:ここで、せっかくの機会なので北部のテーマパーク事業について加藤さんに現時点で話せる範囲でお話をお聞きしたいと思います。

 加藤:事業自体は順調に進んでいます。今取り組んでいるのは環境アセスメントで、どんなことをしていけば負荷を避けられるのかというもの。まだ集客をしているわけではありません。中身について伝えるのはなかなか難しいのが現状です。
 ただ、どんなところを目指しているのかについては少しお話しできます。沖縄のリゾート地に消費者が何を求めるか調査をした所、「自分自身を思いっきり解放するということを強く望んでいる」ということが分かりました。この感情にマッチするように、沖縄の自然の地形そのものを活用しながら、消費者が「生きているな!」という実感を味わえるようなテーマパークを作って行こうとしています。

 澤田:私もすごく興味があるんです。自然を生かしたテーマパークで、世界の中でここをベンチマークにしているという場所はあったりするんですか。

 加藤:その質問もよく受けるんですが、今回は初めての取り組みだと思います。山原の大自然を体験するアクティビティもありつつ、そのエッセンスを掴んでより多くの人に体験してもらうようなものにしていくつもりです。

ディスカッションでモデレーターを務める下地芳郎氏

目的を同じくする全員が関わる

 今回のシンポジウムが「観光人材育成・確保促進」を目的としており、会場からは人材育成についての質問も出た。

 質問者:人材の育成には、ブランディングを担う人材のものと、現場スタッフの質を高めるものとの2つがあると思います。講習会なども開催していますが、なかなかうまくいかない現状があります。USJや星野リゾートではどういった人材育成をしているのでしょうか。

 澤田:星野リゾートでは、組織がピラミッド状ではなく、フラットなコミュニケーションができることを重要視しているのが特徴の1つです。これは、どんな立場の人であれ自分の意見を出すことができるということで、出てくる意見の量が増えることで最終的に質が上がっていくことにつながります。
 もう1つはサービスチームという仕組みがあります。商品の提供とともに、開発・企画も同じチームのメンバーで行うんです。そうすると現場で知り得た知見を生かすことができます。自分が企画した商品を提供するので、より深く思い入れを持ってお客様にサービスすることが可能になるんです。
 商品やサービスの情報をきちんと定量的にシェアして、それをスタッフ全員が確認できるようなサイクルができています。

 加藤:今澤田さんが言った、開発と提供を同じにすることはブランディングにも現場にも質の向上をもたらします。目的を同じくすることがすごく重要なんです。それはつまり、消費者との接点がある人たち全員がブランディングに関わるということ。
 サービスを提供する人と、それを考える人とが同じであることは、消費者の満足度を上げることに直結します。ブランドを高めていく仕組みとして、立場は違えど実は同じ目的を達成するために一緒に行動していくことを考えていく、目的を同じくしてそれぞれの立場で考えていく。これを繰り返していくことが大事なんですね。

 下地:県内企業アンケートでは、人材育成に取り組む厳しい理由が色々と上がってきていました。どこでも組織となると担当という役割に限定されてしまいますが、そこから想像力を働かせながらシミュレーションして、いろんなアイデアを出して実践していくことも重要ですね。今日あった話からどういうヒントを得て、今後どう実践していけるか考えなくてはならないですね。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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