新型コロナが変える沖縄の転職

 
面接イメージ 沖縄ニュースネット

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う休業要請や外出自粛などの影響で、観光業やその関連業の業績が低迷するなど、転職を考える人々が増えている。さらに、リモートワークを経験した人々や企業が増え、人的リソースの提供元が「会社単位⇒個人単位」へと変化するなど、今後の働き方そのものが見直されつつあるという。

 沖縄県内の「中途採用の転職市場」やキャリア形成の在り方について、転職をサポートするリージョナルキャリア沖縄のコンサルタント・長濱雅徳さんに話を聞いた。

人材流出進む観光業

 コロナ前から、長らく沖縄で転職先として多くを占めていたのは観光系の職種だ。

 2019年の入域観光客数は1000万人を突破するなど、その人数だけで言えばハワイを僅かながら上回っている。観光客を受け入れるためのホテル業を中心に、沖縄では経験者も多い職種だ。

 長濱さんは「ホテル建設が急ピッチで進むなど、観光業関係の雇用の受け皿が乱立している状況でした。『県の労働人口は微増なのに、働く場所だけ急増している』ことになります。どこも人材が不足していました」と話す。

 どの企業も人材不足に頭を抱えるのが、中間管理職以上クラスの人材だ。このような希少で有能な人材の需要過多で、取り合いになっていた。

 しかし、コロナが広がり観光客が途絶えると、今後の見通しの無さや不安感から、観光業関連従事者が他の職種へ転職する動きが当然見られた。リージョナルキャリア沖縄に登録する転職希望者が、3~5割程度増加したという。

「ホテル業界で5年も10年で働いてきた人にとっては、やっぱりホテルで働く方がしっくりきます。しかしホテル業が立ち行かなくなっているため、少し発想を変えて(接客という観点で互換性の高い)飲食業や娯楽業への橋渡しを模索しますが、それらの業種も同じように苦しい状況にあることが多いため、受け入れ先が少ない状況です」

長濱雅徳さん 沖縄ニュースネット
コロナ禍での転職事情などについて話す転職コンサルタントの長濱雅徳さん=5月27日、那覇市内

 この状況下で増えてきているのが「未経験からIT業界への転身を目指す人」だ。

安定のIT人材市場も奥手に 即戦力の需要増

 観光業と並んで、コロナ前の転職先として人気が高かったのがIT系の業種だ。県の企業誘致が功を奏し、関連企業や雇用先も近年大幅に増えてきた。伸び盛りで、比較的高収入が期待できる業界であるため、未経験でも挑戦しようという人は後を絶たない。

 長濱さんは「IT関連の人材は全く足りていません。日本全国で不足しています」と話す。

 これまで、沖縄のIT企業は2次受け3次受けを担当する企業も多かったが、ここ数年では自社プロダクトを持つ企業が増えてきたという。そのような企業は収益性の高さから、慢性的に人材供給不足のIT業界と言えども、安定的に採用につなげられているところも多い。

 しかし、このような一見好調なIT業でも、コロナ禍の影響は避けられない。

「IT系でも、観光業関連のサービスを展開している企業や、顧客が観光業関連の企業だと厳しい現状にあると思います」と長濱さんは話す。IT企業でも、どの分野で誰を相手にサービスを展開するかで、明暗が分かれる。

 企業側も「先行きが見えない」といった不安から、即戦力以外の採用に奥手になっている傾向がある。経験年数5年程度の、これから伸びてくるであろう期待の人材の採用に踏み切れない事情がある。

会社を超えて従業員をシェアする社会

 長濱さんは「コロナ禍はマイナス面なことばかりではなく、新たな価値観、発想を生み出すきっかけにもつながっている」と期待を込める。

 コロナ不況の真っ最中、雇用を守りながらも、社員のキャリア形成を後押しするという背景から、県内でも少しずつ広がりつつあるのが「従業員をシェアする」という働き方だ。

 A社の社員が、A社に在籍しながらB社に出向。両社とも雇用契約を結び、給与はB社から支払われるが、もしも従来の給与に足りない場合は差額をA社が補填する。

 従業員にとって、出向先の企業の方が働きやすかったり能力を発揮しやすかったりする場合は、そのまま転職も可能だ。これにより、従業員にとっては給与水準を維持しながら、新しい職場や職種にチャレンジできる機会となる。

「長期雇用契約をする前に実際に働き、仕事内容や雇用形態、社風など、企業側と労働者の双方がより理解し合うことで『雇用のミスマッチ』を回避することができるでしょう」

自身の「スキルの本質」をアウトプットする時代へ

 このように「仕事内容を『見える化』し、それぞれに人を充てていく」という社会が進むとどうなるか。長濱さんはこう分析する。

「今までは(大企業や知名度のある企業など)企業名で就職希望者が集まってきた側面があります。しかしこれからは『本当に良い企業』に人が集まってくるでしょう」

 また、個人としての能力を磨くことにも重点が置かれる。複数の能力があるとより応用が効きやすくなるという。

「例えば、接客スキルのある人が、その話術を生かして営業職で活躍したり、ITに詳しい人がその技術を応用して非対面で企画を円滑に進めたりするなど、身につけたスキルの本質を問われることとなります。自分が何をできるのか、積極的に主張していくことが大事です」

 自己主張の苦手な人が多いとされる沖縄。今だからこそ「勝負の時です」と長濱さんはエールを送る。

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長濱 良起

長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。2019年に県系移民などをつなぐウェブメディア「One Okinawa」創設。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(東洋企画)

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