宮古島「バブル」からコロナ禍へ 変化の只中で島は

 

 新型コロナの影響で客足が減り、かつての馴染みの地元客の顔もちらほら見えるようになったかと思うなり、昨年4月の緊急事態宣言以降は売り上げが激減。「ほぼゼロ」の日もあり、助成金と融資も受けつつ「何とかしのいでいる」状態になった。
「客商売なので、今の状態になったのはもちろん自分のやり方の結果だと思う。ただ、観光客をたくさん誘致しておいて、『あとはよろしく』という行政のやり方もちょっとおかしかいと思う。飲食もホテルも、観光に直接関連する業種もそうでない業種も、振り回されてしまっていた部分は間違いなくある」

 一方で「店はかなり厳しい状況だが、住民としてはちょっと前の落ち着いた宮古に戻ったみたいでほっとしている気持ちもある。あまりにもバランスが悪かった」とも話し、「これからがまた大変だけど」と付け加えた。

「観光に頼りすぎていた」

 観光客を受け入れる側にとっても、「急激に伸びすぎた」と語るのは、宮古島観光協会の平山茂治専務理事だ。「クルーズ船での観光客急増もあり、市の受け入れ体制が追いついてなかったのは否めない」と振り返りながら、「結果論だが伊良部大橋が出来たあたりから、年間の観光客数が30〜40万人規模から徐々に増えていくようなペースだと良かったのかもしれない」という。

クルーズ船から続々と降りてくる海外観光客。下船場所には常にバスやタクシーがそれぞれ30台以上列を成していた(2019年1月ごろ)

 市役所観光商工部観光商工課の宮國範夫課長は、“バブル”からコロナ禍への急激な変化で「観光に頼りすぎていたことがより浮き彫りになった」とし、今後の宮古島観光の方向性について「これまでも『オーバーツーリズム』などの指摘があった。今までは目標を人数に設定していたが、これからは質の向上への転換が必要だと感じている」とする。

地元住民が置き去りにされていないか?

 観光が島の経済の基幹になっている宮古島だが、あまりに急激な観光振興は島の住民生活に歪みをもたらした。県外資本のホテルと地元観光事業者とのリンクが不十分で、一部を除いては地元に金があまり落ちていないことに不満を持つ人たちも少なくない。「宮古の海岸は全部ホテルになって、地元の人が見られなくなりそう」という冗談にも諦めにも似た感想が漏れる。

伊良部大橋を渡ると、左右どちらに曲がっても海岸線ではホテルの建設工事が進んでいる

 入域観光客“数”の向上を優先目標として取り組んだ様々な施策は、リゾートホテルの誘致など観光の一面的な部分では島の発展に寄与したと言える。3期12年の間市長を務めた下地敏彦氏の決断力とスピード感ある手腕でしか成し遂げなかった部分も多々あるだろう。しかし、それゆえに置き去りにされてしまったのが地元の暮らしへの配慮だ。
 地元住民は急速度の大きな変化に晒されながらも、それぞれ自分たちの生活を続けていくしかなく、観光政策による“我慢”をせざるをえない状況だったことは否めない。さらに多くの海岸線に大手資本のホテルが建設され、島の景観は現在進行形で大きく変わっている。この点で言えば「島をあげての観光振興」という時、地元住民と行政の感覚は乖離しているように見える。

 宮古島の開発や観光振興においては、島の暮らしへの配慮を怠らず地元住民との折り合いもつけながら進めていくことが問われている。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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