V字回復よりも積み重ね 2020年回顧・OCVB会長インタビュー

 

 ―コロナ対策としての取り組みや、その中で見えてきた課題・問題点は。

「今回のコロナは、これまで取り組んでいた観光危機管理の範囲では全く対応できないような事態だった。危機管理の重要性を改めて痛感した。

 現在も観光、行政、医療で話し合いを重ねている。6月から空港での水際対策をスタートさせ、旅行者への検査実施で一定の対策につながるよう体制づくりをしたが、無症状者もいるということで、空港だけでは十分でない。さらに、検査の完全な実施にも至っておらず、お願いベースの対応しかできていないので、さらなる強化が必要だ。
 政府の感染確認アプリ「COCOA」に加えて、県のLINE公式アカウント「RICCA」も併用しての市中感染防止対策を県民、観光客、観光業界に呼びかけてはいるが、インストールの普及がまだまだ十分ではない。ワクチン接種も含めた根本的な対策の目処が未だ立たない中では、個々で取り組み可能な対策としてのデジタル活用などについてもっと意識を高めていかなければならないと思う」

国際通りは休業の張り紙が目立つ

テーマは「量から質への転換」

 ―沖縄観光の在り方という点での課題や今後の方向性については。

「感染対策の徹底を前提としつつ、付加価値の高いプログラムで消費単価の向上を目指すことが大きな課題だ。県経済への波及を見据えた“量から質への転換”が大きなテーマだと考えている。
 これまでのリピーターに加えて、コロナ禍を踏まえて今まで海外旅行に行っていた層にもアプローチをかけていく。実際県内の高級リゾートへの長期滞在客も徐々に増えてきている。よく比較対象としてハワイが挙げられるが、沖縄とハワイでは物理的な距離の違いも大きい。沖縄は東京から2時間半で行ける“手軽な観光地”なので、滞在や旅行のスタイルには当然違いも出るし、ハワイと同様には伸びない部分がある。そういった点を踏まえて、当面は国内市場の取り組んでいく方向だ。
 海外向け、特にクルーズ船をどうしていくのかについての判断には時間がかかるだろう。国内のクルーズは試験運航という形で再開し始めているところもあるが、海外だと集団感染が発生したダイヤモンド・プリンセス号の例を想起する。今後の誘致については極めて慎重に議論しなければならない状況だと思う。

 コロナ禍というタイミングでの新たな取り組みとして『ワーケーション』が今後鍵を握ると考えている。リモートワークが急速に広がった現在、ビューローで県内のワーケーション推進役を担ってほしいという要望もあり、年明けから本格的に動いていこうと思っている。これも沖縄への長期滞在につながる1つの取り組みになりうると考えている。
 コロナ禍以前からだが、IT化が劇的に進んでいく中で、インターネット関連のツールを使って最低限やらないといけないことと、スキル次第で取り組めることの落差が非常に大きくなってきている。ついていけない人もいれば、大きく業績を伸ばす人もいるというバラつきがあるのが現状。人のホスピタリティは継続して一定価値を有してきているが、今後はデジタルホスピタリティもしっかり強化しなければマーケットでの支持は得られにくくい。
 観光関連事業者の方々を取り残さないよう、ITと観光の連携強化をさらに図っていかなければならない」

中長期の視点で取り組み

 ―2021年の展望は。

 「コロナで観光業界全体的にトーンが暗い話が多いが、一方で『沖縄に行きたい』という声は圧倒的に多く上がっており、強力なマーケットがまだある。感染状況を鑑みるのは当然だが、そうした中でも落ち着いたらきちんと受け入れられる体制・環境を作っていきつつ、そうしたマーケットに情報発信し続けることに尽力したい。
 現在のコロナの状況は1年間で完全に払拭できるものではないので、中長期的な視点で取り組まなければならない。だからV字回復よりも、着実なことを積み重ねながら徐々に回復していく方向を目指していくことになると思う。
 この間に空港や港湾、宿泊施設などの観光関連施設の受け入れ環境を強化していくことで、コロナの収束を見据えた取り組みをしっかりやっていけば、バラ色とまではいかないまでも、明るい未来は描けるのではないかと思っている」

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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