新型コロナワクチンの効果向上に期待 OISTが免疫と腸内細菌の相関を調査

 
研究成果を発表したOISTと那覇市医師会のメンバー

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)と那覇市医師会の共同研究チームが、新型コロナウイルスのワクチンとして使用されているmRNAワクチンの免疫反応に人の腸内細菌が及ぼす影響について調査し、糖類の一種である「フコース」を分解する腸内細菌が活発な人は免疫効果が弱くなることが明らかになった。
 個人差があるワクチンの効き目について、様々な要因が考えられる中の1つの相関性が研究成果として可視化されたことで、研究チームは「将来より効果的なワクチン利用法を考える上で重要」として、個々人の状態に応じたワクチン投与方法の開発や、ワクチン接種前の体質改善によって効果を向上させるなど、今後の応用例の可能性についても期待を寄せた。

投与量・方法の調整で将来はより効果的に

研究成果についてコメントするOISTの石川裕規准教授(左)

 今回の研究を実施したのはOISTの石川裕規准教授が率いる免疫シグナルユニット。ワクチン摂取によって得られる予防効果の程度には個々人でばらつきがあり、その原因は未だ定まっていないのが現状だ。そこで、ワクチン効果の個人差に関係する因子を特定するため、2021年5月から約1年の期間、20~80代の沖縄県民96人を対象に調査を実施した。

 被験者からファイザー製ワクチンの1回目接種前から接種2日後、2回目接種の2日後、7日後、41日後の計5回の採血と、期間中1度の便を採取。OISTのスーパーコンピューターを用いて遺伝子活性や腸内細菌の解析を行った。

 その結果、人の粘液や海藻類のぬめり成分に含まれる糖類の一種「フコース」を分解する腸内細菌が多い人は、コロナウイルスに感染した細胞を破壊する免疫細胞の「T細胞」があまり増えないことがわかったという。多くの人へのワクチン効果を担保する上で、この相関性が明らかになったのは今後も続くコロナ対策の“確かな1歩”だ。

新型コロナウイルスについて解説する研究チームの博士課程4年・廣田雅人さん

 研究チームの博士課程4年・廣田雅人さんは「ワクチンの効果が予測できるようになる可能性が大きい。事前に効果の程度を知ることができれば、それに合わせて投与方法や投与量を調整するという風に応用できると思います」として、今後の研究によってワクチン効用のばらつきを平準化することができる可能性について説明した。

「他の感染症や、がんにも発展性」

那覇市医師会の友利朝朗会長

 那覇市医師会の友利朝朗会長は研究成果について「腸内細菌が関与しているのは意外でした。腸内細菌の重要性はよく言われているので、上手く調節することができれば素晴らしい効果が得られると思います」とし、「副反応の個人差についても今後の研究を期待したいです」と付け加えた。

 玉井修副会長は「コロナは今年5類に引き下げることになっていますけども、コロナとの闘いは続きます。同時に後遺症についても問題が残っています。今回の研究成果が今後、ワクチン効果予測や副反応の色んな問題に役に立ち、沖縄県民だけでなく全世界の人々の命と健康に大きく検討できることを期待しています」と述べた。

 さらに、崎原永辰所長は「健康診断の中で腸内フローラを調べることもできるので、あらかじめ自分が効きやすいかどうかを把握することも可能でしょう。今回の成果はコロナに限らず、他の感染症やがんなどへの対応について発展性があるのではないかと思います」と研究成果の応用性についても期待した。

 この研究結果は国際学術誌『コミュニケーションズ・バイオロジー』に掲載された。研究チームによると、腸内細菌とワクチンの免疫反応との相関性が明らかになったのは世界初という。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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