那覇の商店街にトライアル店舗や起業塾設置へ 挑戦の拠点に

 
那覇市・市場本通り(写真ACより)

 那覇市の市場本通りとその周辺の商店街で「新しいことをはじめてみたい」「自分のやりたいことにチャレンジしたい」という人を後押しすべく、トライアルカフェ・キッチン設置や、起業・マーケティングなどについて学ぶ塾を開設する計画が進んでいる。主体となるのは商店街にゆかりのある女性4人からなる「3Be(スリービー)」。メンバーの一人・前泊選香さんは「実践的なセミナーを開いたり、挑戦したりできる拠点を那覇に作りたいよね、と意気投合しました」と話す。実現に向けて始動したクラウドファンディングには、目標額の65万円を大きく上回る約94万円が集まり、地域からのニーズも高い。

市場本通りでトライアルキッチン

3Beのメンバー。左から前泊選香さん、下地小夜子さん、平良天李さん、外間有里さん

 メンバーは前泊さんの他に、下地小夜子さん、平良天李さん、外間有里さん。それぞれがライティングやデザイン、公的手続きなどの得意分野を持ち寄った1つのチームで、11月には「一般社団法人ひとまちcreateなは」として法人も立ち上げた。

 トライアルカフェ・キッチンは、料理やお菓子などを販売してみて、実際の店舗開設までのイメージ作りやテストマーケティング時の助けとなる。外間さんが3代目を務める市場本通りの「外間製菓所」を改装して作った。木の温もりが感じられる内装・外装は、幅広い業種にマッチしそうだ。起業・副業、目標などについて相談できるコミュニティカフェとしての機能も併せ持つことで、堅苦しいイメージではなく気軽に立ち寄れるような雰囲気を作り出している。

 起業やマーケティングなどについて学ぶ「はじめの一歩塾」は、外間製菓所がある店の並びの2階部分「水上店舗」の一角にある、3Beのオフィススペースで開催される。2023年1月下旬から、隔週土曜日計8回の開講を予定している。カリキュラムは、事業資金や経費など金銭面についてや、事業や商品の発信方法、テストマーケティングなど多岐に渡る。

 いずれの取り組みも老若男女問わず広く参加者を募り、それぞれの夢の実現や地域活性につなげる。

キーワードは「身近」と「気軽」

 「身近」で「気軽」であることを意識した3Beの活動。主に企画やデザインを行う下地さんは「気軽に相談や挑戦ができる環境を生み出していきたいです。一歩踏み出すハードルがあると思うので、そこを払しょくできたらいいなと思います」と話す。以前起業系のセミナーに参加した際に、最初は不安だったという自分自身の気持ちに重ねた。下地さんが手がけたデザインの数々がオフィススペースにあることで、ふらりと立ち寄れる空気感を演出している。

下地小夜子さん

 「事前の知識がなくても参加できるように、“基礎の基礎の基礎”を学べるようにと意識しました。自分たちが『こういうのがあったらもっと良かったよね』と思える内容を大事にしています」と話すのは前泊さんだ。もともと会社員だったが、自身のキャリアに向き合った時に、女性向け人材育成のセミナーに参加したことで、多くの出会いから経営者やフリーランスとして働く人が意外に多いことを知ることができた。現在は専門学校の講師やコーディネーターなど、複数の仕事を同時に行うパラレルワーカーとして自分らしさを発揮している。

前泊選香さん

地域の特色出すためには「トライできる環境大事」

 那覇市の商店街を盛り上げようという気持ちはもともと高いメンバーが集まった。平良さんは「那覇市国際通り商店街振興組合連合会」の職員として働いている。コロナ禍の中、お店の頑張りをずっとそばで見てきた。「まちづくりをする上で、その地域の魅力ある特色を出すためには、やっぱり地元のお店の力や、若い人がトライできる環境が必要だと思います」と確信を持っている。

平良天李さん

 外間さんは、外間製菓所の店主でありながら、那覇市議会議員も務める。2021年の初当選時には、政策の柱に「商店街まちづくり」や「若者と女性の活躍推進」などを掲げており、その理念と今回の活動には共通点も多い。「起業を志す人のモチベーションや考え方って前向きで、地域の課題を主体的に解決していこうという姿勢があります。そういった人々が集まって力を合わせることで、地域の担い手も増えてくるのではと思っています」

外間有里さん

挑戦する若手を応援する文化

 長い歴史を持つ「那覇のまち」。たくさんの人々の思い出を包み込むこの場所は、今も昔も活気ある沖縄の象徴とも言える。「地域のみなさんがこの地域のことを語る時に『昔はここにこんな店があったんだよ』って、とてもいきいきと楽しそうに話すんですよね。それってきっと『自分たちがこのまちを作ってきたんだ』という誇りがあるからだと思うんです」(前泊さん)

 長年このまちで歴史を見守り、その経験からたくさんの知恵を持っている人。このまちで新しい感性を持って何かを始めようとしている若い人。この両方がマッチしていくことで、また次の未来が作られていく大きなきっかけになる。

 平良さんが「地域の大人たちにいっぱい褒められました。私も大人なんですけど」と笑って話すように、挑戦してきた先輩たちが、これから挑戦する若手を応援する文化が育つ那覇のまち。”初めの一歩”から新しい那覇の歴史がまた始まっていく。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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