「琉球経済圏の確立」を目指す“共創型”コミュニティが始動

 

 沖縄県内のビジネス価値を高めて、県外や国外からしっかりと“外貨”を獲得して強い経済を作ろうという“共創型”のビジネスコミュニティ「GROOVE OKINAWA」が今年5月に立ち上がった。掲げるのは「琉球経済圏の確立」。現在、ビジネス系のコミュニティでは、専門性やカリスマ性のある人がトップに立って運営するオンラインサロンや、地元の経営者らが集い意見交換するローカルコミュニティが主流とされているが、「GROOVE OKINAWA」が目指すのは、夢ある若者や成長したい人が同列にビジネスを切り拓いていくコミュニティだ。山川勇之丈代表(30)は「その分野でリーダーとなる存在を作っていって、将来的に大きく沖縄経済を引っ張っていく状態を作りたいです」と意気込む。

「沖縄経済にインパクトを与える集団へ」

 「GROOVE OKINAWA」は「共に学び、共に挑戦し、共に喜びを分かち合い、共に支え合う」という理念を持ったコミュニティだ。2023年末までにひとまず会員数100人を目指している。スタートアップ経営者や学生起業家、フリーランス、独立志向のある会社員などが集まる。ミッションは「沖縄経済にインパクトを与える集団へ」。

 コミュニティには、目標を持つ「ドリーマー」、約20人いる伴走役の「ドリーム・ディレクター」、資金調達などの機会を提供する「アドミニスター」、共創のネットワークをつなぎ合う「コ・クリエイション」の4つの役割があるが、この4者に上下関係などはなく、共にビジネスを作り出して実践する。

 「案件を提供し合ってメンバーで一緒にプロジェクトチームを立ち上げることで、アウトプットして学びながら、自身の仕事につながるビジネスマッチングを行っていきます」

中学時代に気づかされた沖縄経済の課題

 山川代表が沖縄経済の問題点を痛感させられたのは、中学生の時だった。父親が会社の借り入れの連帯保証人になった際、筆頭債務者が夜逃げし、次の債務者がその資金を横領してしまい、個人で何千万円もの借金を背負う羽目になってしまったことがあった。生活は「もちろん大変な目に遭った」と、今となっては過去のこととして語れるものの「自分たちも大変だったんですけど、周りを見ていても同じぐらい大変そうだったというか。借金を背負っていても背負っていなくても、経済環境があまり変わらないと感じたんですよね」と大きな疑問を抱いたという。「これは家庭の問題以上に、県経済全体の問題なのではないか」―。

 山川少年は、沖縄の自立型経済の一端を担おうと決めた。そのアプローチを政治と経済のどちらの切り口から進めていこうかと考えたという。祖父が沖縄県議会議員を務めていた一方で、父は設計関係の経営者をしており、身近に政治と経済両方のプレーヤーがいた。「政治だとどうしても、沖縄に変化が訪れるまで時間がかかるなと思ったんです。沖縄をとりまく日本、アメリカ、中国といった大国の姿勢もあるので、なかなか政治一本だけでは難しいだろうと考えました。なので実体経済を動かす経営者を目指そうと決めていました」

勉強を頑張るとモテなくなってしまう沖縄

「沖縄の経済構造は、観光内需が多くを占めています。その市場を、貿易も含めてどんどん外に出していく動きが必要です。県内大手企業が、なかなか県外進出できないのは、やはり140万人の市場では成長に限界があるからだとも感じています。外とのつながりを持って、沖縄にアイデアや技術を持ち込むことでイノベーションが起こるはずです」と山川代表が語るように、自身も別事業で全国各地の地方創生に携わっている。そうすることで、各地とのパイプを強化し、沖縄に還元できると信じているからだ。

沖縄県の産業割合(2015年度、沖縄県のHPより)

 山川代表は、ビジネスパーソンの自己投資の重要性にも触れる。マーケティングリサーチを行う民間企業が行った昨年の調査によると、資格取得やセミナー参加などでスキルや知識の向上に取り組んでいるビジネスパーソンは、全体の2割程度だという結果が出た。

 「ただ、この2割の人のうち、月のうち自己投資にかける時間が5時間未満だという人が約半分なので、実際に時間を費やして励んでいる人は1割程度で、諸外国と比べてもかなり低い数字です。でも逆に言えば、それがチャンスなんです。自己投資を続けて、伸びていく人は“日本では勝てる”はずです」

 しかしながら、沖縄の社会的な空気感をこのように指摘する。

「勉強することがカッコ悪いみたいな風潮があるというか。勉強したら『まーめーしー(真面目君)』とか『面白くない』『ダサい』って言われて、勉強したらモテなくなるという謎の空気感があるんですよね(笑)優秀な人が育ちにくい環境があると思います。もちろん『勉強しなくても生きていけるよ』という見方もありますが、経済を強くするには考える力も必要です。大人になって『もっと勉強しておけばよかった』って言う人も多いじゃないですか。GROOVE OKINAWAが同調圧力に屈しない存在になって挑戦を後押ししたいです」

目指す“琉球経済圏”の姿

 山川代表は今後の展望として「人と情報のプラットフォームを作っていきたいと思います」と語る。「『沖縄にこの問題を解決できる企業がありますよ』『ビジネスを作りたいならここに相談すると良いですよ』というような役割を果たして、全国的にもビジネスの集まるコミュニティにしたいです」

 ビジネスをする上で沖縄を価値ある存在にして、沖縄にしっかりと還元させる。沖縄が主体的になってしっかりと経済的な潤いをもたらす。かつて琉球の先人たちが海外各地に出向いては、したたかにビジネスを切り拓きアジアの重要拠点となったように。これこそが、「GROOVE OKINAWA」の目指す“琉球経済圏”の姿だ。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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