芸術×科学で意識の在り処を追求する 人間と機械をテーマにした『Shell of Time』上演

 
山田うんさん

「意識は空間や時間の中に偏在している」

 「Shell of Time」と銘打った公演は「時間の抜け殻」と訳され、副題には「群れと拡張される記憶と身体」と付されている。

 池上さんはタイトルに「時間」という言葉が入っていることについて、「意識というのは『時間』の別称でもあります。時間について考えて哲学や理論を作っていくと、それは意識の研究につながっていくんです。その意味で、時間についてもっと考えようということなんです」と説明する。

 公演は四幕構成で、第一幕「一体の旅立ちから群に」では舞台空間に100台のドローンの“群れ”が放たれる。その中で山田さんが踊ることで、群れの意識がどのように立ち上がるのか、そしてその意識と人間が接触した時に何が生まれるのかを問う。

 第二幕「人とAI」では、非常に高い精度で言語処理をすることができる「大規模言語モデル」(ラージランゲージモデル、LLM)の「GPT-3」というプログラムと実際に会話をすることで、AIが意識を持ちうるかどうかを考える。

 続く第三幕「閉鎖的に見える広い世界」では、ヘッドマウントディスプレイを装着してVRでメタバースの空間と時間の意識に接触しながら山田さんが踊ることで、「全く別個な世界が構築される」(池上さん)ことを見据え、メタバース上に「生命が降り立つ場所を作る」という。

 そして第四幕「祝祭」では、小刻みに振動する小さなロボット600台をステージ上に動かし、それまでのパフォーマンスで表出したことも踏まえながら、「意識は空間や時間の中に偏在している」(池上さん)ということをメッセージとして伝えるという。

2人が手に持っているのは、第四幕で使用予定の小型ロボット

 山田さんは表現に臨むにあたって「どんな風に場所と時間と交渉しながら、私が何を身体でデザインできるかということを考えている」という。「ただの即興ではなくて、ある程度の予測を持ちながらその場で起こっていることに呼応する。モノと、そこにいる人と、自分の身体と、そして重力とネゴシエーションしていきたいですね」と語った。

<公演情報>
・開催日時:12月17日(土)18:00開演
      12月18日(日)14:00開演/18:00開演 ※いずれも30分前開場
・会場:那覇文化芸術劇場なはーと 小劇場
・料金:一般 2,500円/高校生以下 2,000円

■関連リンク
『Shell of Time』チケット予約フォーム
『Shell of Time』公演情報(なはーとWEBサイト)

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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