芸術×科学で意識の在り処を追求する 人間と機械をテーマにした『Shell of Time』上演

 
山田うんさん(左)と池上高志さん(右)。山田さんの手前頭上には上演で使用するドローンが浮遊している

 「人間と機械のあいだ」をテーマに、振付家でダンサーの山田うんさんとAlife(人工生命)研究者の池上高志さんが対話を重ねて新たな芸術表現を模索するプロジェクト『Shell of Time ~時間の抜け殻~群れと拡張される記憶と身体』の第1回公演が12月17、18両日、那覇市の那覇文化芸術劇場なはーとで上演される。人間と機械とのコミュニケーションによって、芸術と科学とを調和する表現を追求するステージには、山田さんのほか、数十台のドローンや小型ロボットの群れが登場し、VRやAIを使った表現も予定されている。

 公演を前に会見を開いた山田さんは「パフォーマンスはやる側と見る側で相互的に作られていくと思っています。自分にとっても、見ている人たちにとってもセラピーになり、問いになるものにしたいです」と意気込みを見せた。池上さんは「人工的な生命を作るという研究分野が、生命性を別角度から捉えるようなパフォーマンスにしたいですね」とコメントした。

芸術×科学の昇華を担うキャスト陣

 今回の上演のコンセプトは池上さんが手掛け、演出・振付を山田さんが担当。作・構成・出演は2人で担う。

 山田うんさんは器械体操、バレエ、舞踏などを学び、1996年から国内外でアーティスト活動を展開している振付家・ダンサー。演劇やオペラ、音楽劇、MVなどにも多数関わっており、近年では東京2020オリンピック閉会式でも振付・演出を担った。

 池上高志さんは複雑系の科学、人工生命を専門とする理学博士。東京大学広域システム科学系教授で、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のビジティングスカラー外部研究員でもある。専門の研究のほかに音楽家の渋谷慶一郎さんや能楽師の安田登さんらとアンドロイドを活用したパフォーマンスをするなど、アート活動も多数展開している。

 衣装、装置、映像デザイン製作には、人工生命の研究から生まれた理論・技術の社会実装に挑戦する研究者たちでつくる会社「Alternative Machine Inc.」と、AIや3D技術などのデジタルテクノロジーを駆使した革新的な開発・社会実装を試みるデザインラボラトリー「Synflux」が参加する。

“生命になる”ために必要なことは何か

池上高志さん

「細胞やDNAを使わずとも、生命は立ち上がるというのが僕の考えです」と池上さんは語る。人間の知性や生命について、脳だけを軸に理解する傾向が強いが、実は身体の方が大事なのではないかという考え方に基づいて、コンピュータやロボットが“生命になる”ためにはどのような仕掛けが必要なのかということを人工生命の研究で考え続けてきたという。

 池上さんは専門とする人工生命研究の視点からの生命について「所有から逃げるもの」と定義する。

「どこかにある自分の自由を確保するために、生命は逃げるもの。それが意識や自由意志の問題とも絡んでいると思っています。それが作れたら初めて生命が作れたと言えるのではないか。内蔵や肉体などの必要な要素だけを組合わせても、個体や生命は生まれなくて、プラスの何かが必要なんです。その『何か』を探しているのが人工生命の研究なんですよね。所有からの解放や自由度を担保することが、おそらく生命性にとっては本質的な問題で、それを分かりたいということが今僕がやっている話です」

 5~6年前からアンドロイドを制作し、人間との相互作用によって生命的なことを学習させることにも取り組んでいる。その延長線上で「ダンスを通して人とコミュニケーションを図ることで、生命性が生まれるのではないかと考えたんです」という。これが今回の公演の背景にある発想だという。

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