沖縄黒糖と富山昆布が包括協定 両県サッカーチームの交流から

 

 海上交通が盛んになり、北海道(蝦夷地)や日本海沿岸の各港を結ぶ「北前船」と呼ばれる船々が、各地の特産品を積んで交易をしていた。その中の品目にあった北海道の昆布は、富山(越中)に運ばれるなどして富山の食文化に定着。だしに多用されるだけではなく、昆布締めや昆布かまぼこなど、たくさんの“うまいもの”を生んできた。

 そして同じく昆布の食文化が根付いた沖縄。沖縄(琉球)に入ってきた昆布は、北海道から北前船で富山を経由して、大阪(大坂)や鹿児島(薩摩)に渡り、琉球へとやってきたのだった。そんな壮大な交易路は「昆布ロード」とも呼ばれている。

 日本海を進んだ北前船は、一度「中央」を経由することなく「ローカル同士」を直接つなぐことのできる存在だった。SNSを介してご当地食材の行き来がなされた今回も、当時と同じようにローカル同士の交流を推し進めた形だ。

SNSを見た黒砂糖協同組合が直電

 このようなSNS上のやり取りを見逃さなかったのは、沖縄県黒砂糖協同組合の宇良勇次長だ。昆布協会さんに直接電話をかけて、今回の包括協定の出発点をつくった。沖縄SVとカターレ富山の両チームの協力も実った協定に「(黒砂糖協同組合と昆布協会の)2者の協定ではありますけど、実際は4者が絡んだ協定です。先方も面白い試みだと思ってくれたのだと思います」と振り返る。

沖縄の8島で生産される黒糖を前にして話す、沖縄県黒砂糖協同組合の宇良勇次長

 黒糖は増産傾向にあり、新たな販路拡大が目下の課題でもある。スポーツをきっかけに新たな消費先を開拓した格好だ。

 沖縄県黒砂糖協同組合としてもかねてから、黒糖PRやキャンプ招致の一環で、J2町田ゼルビアの試合で黒糖を配るなどの活動を行っていた。沖縄県民にはなじみ深い黒糖だが、県外ではそもそも黒糖の食べ方自体が知られていないという。「砂糖を直接食べる」ということが普段はないため、粒のままでも食される黒糖は、試合会場では新鮮さを持って受け入れられたようだ。

カターレ富山ホーム戦で「黒糖マッチ」

 11月20日に開催予定のカターレ富山ホーム最終戦は「黒糖マッチデー」と銘打って、会場で黒糖商品のサンプリング配布などを行う。宇良次長は「普通考えられないですよね、サッカーの試合で『黒糖マッチ』って」と楽しそうに笑いながら「そういうことをやれるというのが、一番の喜びです。高原さんを沖縄黒糖アンバサダーに任命してから、まさかここまでの動きになるとは。いい意味での想定外です」と話す。

 ミネラルやカルシウムが豊富に含まれる黒糖を、初めて食べる富山の子どもたちもいるかもしれない。宇良次長は「『これは身体に良いんだよ』って意識しながら食べてほしいです」と健康食品としての認知度向上に期待しつつ、脳の疲労回復などにも効果があることから「ぜひ脳でも味わってほしい」と、全方位的に黒糖の魅力を発信している。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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