フリーランスを一元的にマッチング「STONES」始動へ 県内初
- 2020/8/25
- 経済
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ありとあらゆる経済活動が打撃を受ける中、特定の企業や組織に属さずに働く「フリーランス」の人々は、活躍の場や収入が減少するなど苦境に立たされている。
このような状況を改善しようと、経営コンサルティングや起業支援などを行うブルームーンパートナーズ株式会社は、仕事を発注したい企業などと、仕事を受けたい各業種のフリーランスの双方を結び付けるエージェントサービス「STONES」を9月以降、展開させる。
仕事内容やニーズに合ったフリーランスを能動的に“マッチング”させる点が、従来型のフリーランス仲介業とは一線を画す。同社の伊波貢CEOは「フリーランスの方々のためにもどんどん仕事を生み出していきたい」と話す。
フリーランスの個性を把握、適切な案件へ
新型コロナの感染拡大によるフリーランスで働く人々への影響については、4月に民間が全国で実施した調査で、65%以上の人が収入が減少し、月収で5万円〜10万円も減ったと回答した人が15%にも及ぶなど深刻な影響が出ている。
仕事の発注そのものも少なくなる中で、いかに企業とフリーランスを効率よくマッチングさせるかが大きな課題だ。
このサービスでは、デザイナー、ライター、カメラマン、映像制作、イラストレーター、WEBデザイナー、舞台監督、司会業、コンサルタントなど、さまざまな職種のフリーランスに登録を呼びかける。一定の審査をクリアした500人程度の登録を目指す。
料金総額の2割をエージェント料とするが、このコロナ禍であることも加味し、2020年中は無料とする。
「沖縄の場合、どんなフリーランスの方が、どこにいるのかが分からない」。伊波CEOはかねてからこの問題を感じていた。「お互いの情報不足がこれまでネックになっています」
STONESではそれぞれのフリーランスに得意分野や長所をヒアリングし、適切な“ビジネスの出会い”を提供する。
「同じデザイナーでも、企業のブランディングに強いとか、チラシ作りに長けているとか、カメラマンでしたら商品を撮るのが得意な方もいれば、人物を撮るのが得意な方もいます。フリーランスの方の強みを理解し、クライアントの要望に応じたアレンジをしてつなげることができます」
多種多様なフリーランスを抱えることで、複合的なニーズにも応えることができる。例えばウェブサイトを作りたい時には、ライター、カメラマン、デザイナー、プログラマーなどを、要望に沿った形で一括マッチングできるのが他にはないSTONESの強みだ。
フリーランスにとっては仕事依頼の絶対数が増える好機となり、クライアントにとってはフリーランスを探し当てる工程や手間を請け負ってもらえる。
「結婚相談所みたいなものですよね。好みを聞いて、合わせていきます」
第三者として交渉を公正に
ビジネスマッチングの面以外にも、エージェントを通すメリットは多い。価格交渉などの事務的な業務を代行してもらうことで、フリーランスもクライアントも円滑に仕事を進めることができる。
会社組織などの後ろ盾がない分、フリーランスは価格交渉で不利に立たされる場合が多い。仕事を「もらう」立場であることから、人によっては足元を見られて弱気な交渉になるなどした結果、公正な報酬を受け取れない例もよくある。
伊波CEOは「第三者的な立場から公正に価格交渉ができます。ある仕事の適正価格5万円を1万円や2万円に叩かれることがなくなる」と話す。
クライアントにとっても、STONESが仲介し、法人同士で契約を交わすことは、トラブルを防止できる安心材料となる。個人が相手だと「本人がケガや病気になった時、代わりの人がいない」「納期に間に合うかどうかの保障がない」などの心配が残るが、それらの不安を払拭し、プロジェクトを円滑に進めることが可能だ。
「フリーランスは腕利きが多い」
「STONES」という名前は、城壁の周辺に転がる石たちをイメージした。
「(経営規模として)企業が城壁そのものに組まれた『岩』ならば、フリーランスは石のように小さいかもしれません。だけど、一つ一つはいろんな形があって、味わいもありますよね」
「フリーランスは独立して仕事をできている分、クオリティが高いものを生み出せる腕利きの方が多いと思います」と伊波CEO。
「そんな腕の良い人にダイレクトで仕事を頼めるのは、コストパフォーマンスの観点からも優れています」
大企業だとランニングコストがかかる分、実際の技術料以上の料金が上乗せされるが、STONESだと各分野のフリーランスに直接アクセスできる分、余分なコストを抑えることができるという。
「そのような(優秀な)人たちとつながれるのは、社としても財産になると思います」
社会課題解決で皆の「幸せ」を実現
伊波CEOがブルームーンパートナーズを立ち上げたのは「沖縄の社会的課題を解決する会社を作りたい」という思いがあったからだ。
琉球を統一した尚巴志の末裔でもある伊波CEOは、親からも「沖縄のために貢献しなさいよ」と言い聞かせられ、大局的に物事を見る力を養ってきた。
今回だって、そうだ。
STONESを展開する背景には、「困っているフリーランスへの支援」が目的としてあった。コロナ禍で世の中の「仕事の総量」が減った時、早々と打撃を受けたのがフリーランスの人々だった。
「コロナの時代、それでも経済を回していかなければならないと思っています。この状況で手をこまねくだけではしょうがないじゃないですか。僕らが仕事を生み出す努力はするので、そこに乗っかってくれる人を募集したいと考えています。どんどん仕事を振っていきたいです」
社を立ち上げて5年が経った。経営理念を一新した。
「STAY CRAZY,BE HAPPY」
極めるクレイジーさを。何よりも「幸せかどうか」で全てを判断してほしい。そんな願いを込めた。
誰もが幸せになる沖縄を目指して。
STONES=石。それはただの石ころではない。フリーランスという光り輝く宝石を集めて、沖縄で大きな宝石箱を作ろうとしている。