舞台芸術で大切なこととは? ジャンルを横断して「演出」を学ぶ

 
当山彰一さん

人を傷つけず、楽しい現場を

 観客がスイッチを押すと3〜30秒の演劇が始まるという独特の形式で上演を行っている「スイッチ総研」の光瀬さんは、全国各地で上演してきた経験にも触れつつ「その時にその場所でしかできないことをするように心がけていますね」とこだわりを説明した。

 コロナ禍になったことで、触れない形でスイッチを入れられるような工夫をしている現状についても語りながら「基本的には関わった人たちがみんな笑い合えるように演出しています」と述べた。

 現代演劇を中心に県内での舞台芸術に関わり続けている当山さんは、ヨーロッパ近代的な演劇の『新劇』というジャンルの演劇に出演した経験などにも基づいて、現代演劇と沖縄芝居の違いについて話した。

「ウチナー(沖縄)芝居は基本的に様式美の世界であることに加えて、所作も全く違うんです。例えば、着物での生活に馴染みがない我々と、昔のウチナー芝居の役者ではそもそも身体の動きが全く違います。先輩からは演じる上で沖縄の文化に触れ続けて『沖縄の土の匂いがしないといけないよ』と指導されました

 また、当山さん自身がかつて理不尽に厳しい指導をされて辛い思いをした経験から「人を傷つけないように、基本的には楽しい現場にすることが大切だと思いますね」と、演出をする上での思いも語った。

國仲正也さん

「何をしたいか忘れないようにする」

 イベントの企画者でもある鳩スの国仲さんは、演出家として大切にしていることとして「役者が気持ちよくできるように、お菓子とお茶をちゃんと用意することです」と話して笑いをとり、会場を和ませた。嘉数さんも「僕はお汁もおでんもイリチーも作って振る舞いますよ」と賛同した。

 ダンス・パフォーマンス的グループを主宰する白神さんは「自分が何をしたいのかを忘れないようにすることが大事だと思います」と強調した。同じ表現に関わる自分以外の演者の価値観や個性を否定することなく、「絶対の正解はない」ということを前提にしながら「自分がやりたいことの1番大事なものを一緒にやっていけるように模索するんです」と説明した。

 この後、来場者との質疑応答でもやりとりがあり、普段はあまり触れる機会のないさまざまなジャンルの表現における演出について理解を深めた。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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