名護市長選幕開け 岸本、渡具知両氏が第一声 全国的にも注目

 

 任期満了に伴う沖縄県名護市長選が1月16日に告示された。投開票日は23日。立候補したのは届け出順に、名護市議会議員で新人の岸本洋平氏(49)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=と、2期目の当選を目指す現職の渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=の2氏。米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を抱える名護市の市長選は、全国的にも注目が高まる重要選挙と位置付けられる。その他、沖縄県北部の中心都市としての役割から、市長選の結果が「北部振興」の今後を方向付けることにもなる。

 16日朝には、岸本陣営が「出発式」、渡具知陣営が「出陣式」をそれぞれ名護市内の主要交差点で行った。直線距離にして約700mしか離れていない両会場からは、熱気のこもったスピーチが繰り広げられ、選挙戦の幕が開けた。

岸本氏、市政刷新へ「一歩も引きません」

 水色のカラーに身を包んだ岸本氏の支持者が結集した名護市宮里の交差点では「オール沖縄」勢力の国会議員や玉城デニー沖縄県知事が次々と登壇。投開票日までの団結を呼びかけた。太鼓や指笛で鼓舞する支持者もいた。

 妻にタスキをかけられた岸本氏は第一声「みなさんと力を合わせて前進してまいります。私岸本洋平、一歩も引きません」と気勢を上げ、支援をお願いした。

 相手陣営から財源確保の課題が指摘されている、保育料、学校給食費、子ども医療費の無償化継続については「必ず行います」と断言。さらに「先人たちが守ってきた安心で安全な豊かな暮らしを守り抜きます。そのためにも今市政を変えて、言うべきことをはっきり言える市政に変えなければなりません。基地問題にも新型コロナについても、逃げずに真正面から取り組み、改善させます」と、政府や米軍に対してもしっかりと名護市としてのスタンスを表明していくことを約束した。

 辺野古移設の問題については「子どもたちの将来を考えた時に、やはり辺野古の新基地を認めるわけにはいきません。今市政を変えて、新基地建設を止めることが求められているのではないでしょうか」と呼び掛け「私は一歩も引きません」と繰り返した。

 玉城知事は「名護市民のみなさんの生活のために、未来のために、主張することはしっかりと主張をする岸本洋平さんをしっかり支えていきましょう」と強調した。赤嶺政賢衆議院議員は「現職市長は市議会で『オミクロン株が米軍基地由来である認識を持っているか』と問われた時に『判断できない』と答えたそうです。判断できる市長に交代してもらおうではありませんか」と述べた。

渡具知氏、子育て支援無償化など実績アピール

 渡具知氏の支持者は名護市大北の交差点を、黄緑のカラーで埋めた。保守系の国会議員や県議などがスピーチを重ねる中、この日未明に発令された津波注意報に関連する公務のため、予定より少し遅れて会場に到着した渡具知氏は、岸本氏と同様、妻にタスキをかけてもらって選挙戦をスタートした。

 渡具知氏は「4年前、『この名護市をどうにか変えないといけない』という名護市民の思いが爆発しました。その思いを、私は1日も忘れたことはありません」と声を届けた。

 中心街の賑わいやコロナ対策など、40項目の公約を掲げている渡具知氏は、各省庁を回って、名護市が計画する事業や構想の予算を取り付けてきたことにも触れ「保育料、学校給食費、子ども医療費の、子育て支援無償化というのは、名護市にしかできない大きな事業です」と1期目の実績をアピールした。「もっと女性が働きやすい環境を整え、妊娠、出産、子育てをサポートするチームを作りたい」と子育て世代への取り組みも約束し、コロナ禍にあって「保育士、介護士の処遇改善にしっかりと取り組まなければならない」と決意を固めた。

 自民党沖縄県連の中川京貴会長は「渡具知市長は、子育て支援無償化といった、これまでできなかったことを実現してきました。どんなに素晴らしい政策を掲げても、それに伴う財源がなければ実現できません。渡具知市長はその財源が確保できるんです」と、国とのパイプや実行力を高く評価。公明党沖縄県本部の金城勉代表は「『言うべきことは言う、やるべきことはやる』と言うだけの相手候補に、名護市民の生活や発展する名護市の将来像が見えているのでしょうか」と突いてみせた。

選挙イヤー1発目の大一番

名護市の街並み

 前回2018年の名護市長選挙では、辺野古移設問題を最大の争点に、2期目の現職(当時)だった稲嶺進氏(72、当時)=民進、共産、自由、社民、社大推薦、立民支持=と、渡具知武豊氏(56歳、当時)=自民、公民、維新推薦=が一騎打ち。渡具知氏が約3500票、得票率では約9ポイントの差をつけて初当選した。有権者数は48,781人、投票率は76.92%だった。

 名護市選挙管理委員会によると、今回の選挙人名簿登録者数は50561人(15日現在)。コロナ禍での選挙戦や住民の争点意識の変化などが投票率にどう反映されるか。沖縄の選挙イヤーの火ぶたが切って落とされる。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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