名護市長選挙 岸本洋平氏 辺野古基地「市長権限で阻止」

 
岸本洋平氏

 「選挙イヤー」とも言われる今年の沖縄県。秋に予定される県知事選挙に向けて重要選挙が相次ぐ。早速、1月23日を投票日に行われるのが名護市長選挙だ。

 沖縄本島北部の中心都市である名護市には米軍普天間飛行場の移設先として埋め立て工事が進む辺野古地区があり、これまで選挙のたびに争点とされてきた。さらに中心市街地の再開発、変異株のオミクロン株が猛威を振るうなかでコロナ対策をどうするのか、さらには疲弊する観光業の振興は・・・。さまざまな課題があるなかで立候補を予定しているのが、現職の渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=と新人の岸本洋平氏(49)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=だ。

 二人のうち岸本氏にどのような主張を掲げて選挙戦に臨むのか話を聞いた。

 渡具知氏のインタビューについては以下参照。
 名護市長選挙 渡具知武豊氏 「名護が抱える課題は基地問題だけでない」 | HUB沖縄

名護市辺野古沿岸=2022年1月6日

―米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設について、相手側の渡具知さんは賛否を示していない一方で、岸本さんは明確に反対しています。市長になった際にはどのようにして基地建設を阻止する構えでしょうか。

 市長権限の行使ができます。例えば、埋め立て工事に伴う美謝川の水路切り替えについては水路を市有地が通ることになるので市に権限があります。

 東アジアの安全保障を、各国が協力して作っていくことはもちろん大切です。しかし、先の大戦で地上戦が行われた沖縄に、日本中の米軍基地が集中して過剰な負担があることは解決していかなければなりません。世界的に軍縮が進む中、辺野古新基地がそもそも必要なのかも疑問です。常に周辺諸国との友好で平和を構築していくことが必要です。

 地元の名護市で起こっている新基地建設問題です。埋め立てによる環境破壊やオスプレイの飛来など、住民生活に著しい影響が想定されます。その中でこの問題に対して態度を明確にしないことは許されることではありません。問題を次の世代に押し付けるやり方です。

 民主主義の観点から考えると、これまでも県民が辺野古新基地建設について民意をさまざまな形で示してきました。県民投票では県民としても名護市民としても反対の意思を示しています。このことは非常に重要で尊重すべきです。

 辺野古沿岸の軟弱地盤では基地自体の完成も見通せない中で、国民の税金を大量に投入し工事を進めるだけ進めています。これが一般の人の家の工事だったら工事中止ですよね。こんなことが果たして認められるのでしょうか。

―名護市は中心市街地や主要幹線道路が通る西海岸と比較して、東海岸の振興に格差があるなど、経済振興も課題です。

 若い人の定住環境や企業進出の基盤を整えるために、高速通信ネットワークの整備を進めていきたいと考えています。東海岸に関しては辺野古と豊原の一部以外はまだ回線が来ていません。

 空き家や空き地が多くある一方で、移住希望者とのマッチングが上手くできていませんでした。ワーケーション施設も東海岸に整備していきたいと思います。継続的に好循環を生み出して、市民の所得や生活、教育の向上につなげていきたいです。 

 農業の6次産業製品や、家庭や福祉事業所で作られる魅力的な手工芸品など、さまざまな商品やサービスを名護市から世界に発信していく点で、ネット販売に特化した新しい担当課「ガジュマルネット」を市役所に設置したいと考えています。楽天やYahoo!など大きなプラットフォームを積極的に活用していきたいです。事業立ち上げ時の補助にも取り組んでいきます。

 やんばるが世界自然遺産に登録されたことも関連して、名護を北部観光の拠点としてアクティビティなどを楽しんでもらえるような環境を整備したいです。滞在型観光で名護の街を歩いてもらえるようなしくみを作りたいと考えています。

名護市街と名護湾、本部半島

―保育料、学校給食費、子ども医療費の無償化についてはどのようなお考えでしょうか。

 この3つの無償化は必ず継続できますので心配は要りませんということをしっかり伝えたいと思います。再編交付金がなくても財源を充てることは十分可能です。

 名護市の一般会計予算は約430億円で、保育料、学校給食費、子ども医療費の無償化に必要な予算は約6.7億円で、全体の1.5%程度です。市の税収は伸び続けています。稲嶺進前市長の子育て支援策にも独自財源で2.2億円を確保できていました。このことを考えると十分可能です。名護市の予備費活用やふるさと納税の増加、先ほど申したガジュマルネットの売上増などで、子育てを支援する「子ども太陽基金」を創設して、返済不要の奨学金などに充てていきたいです。

 財源確保の方法は他にもあります。市有地を官民連携で有効活用していくこともそうです。学校跡地は運動場までありますから、ものすごく広いです。地場産業と観光業が連携した施設をどんどん造りたいです。それだけではなく、大きな公園の一部を民間に使ってもらっての活用も考えています。

―名桜大学への薬学部新設も掲げています。

 薬学部設置に対する県民ニーズや薬剤師不足の現状などについての県の調査も行われてきました。過去には新設を求めた署名活動もありました。沖縄県内に薬学部がないため、学びたい子はどうしても県外に行くことになります。地元で学べると、地元で働くという機会も増えてくると思います。親御さんの経済的な負担も軽減されます。

 薬学部を作るには実験や研究のための施設などハード面の整備も必要です。県と連携して進めていきたいと思います。


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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