名護市長選挙 渡具知武豊氏「名護が抱える課題は基地問題だけでない」
- 2022/1/7
- 政治
「選挙イヤー」とも言われる今年の沖縄県。秋に予定される県知事選挙に向けて重要選挙が相次ぐ。早速、1月23日を投票日に行われるのが名護市長選挙だ。
沖縄本島北部の中心都市である名護市には米軍普天間飛行場の移設先として埋め立て工事が進む辺野古地区があり、これまで選挙のたびに争点とされてきた。さらに、人通りがまばらとなった中心市街地の再開発や変異株のオミクロン株が猛威を振るうなかでコロナ対策をどうするのか、さらには疲弊する観光業の振興は・・・。さまざまな課題があるなかで立候補を予定しているのが、現職の渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=と新人の岸本洋平氏(49)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=だ。
二人のうち渡具知武豊氏にどのような主張を掲げて選挙戦に臨むのか話を聞いた。
岸本氏については以下の記事を見て頂きたい。
名護市長選挙 岸本洋平氏 辺野古基地「市長権限で阻止」 | HUB沖縄
―――まずは、名護市でも感染が拡大している新型コロナの対策についてです。どのような対策を取っていく必要があると考えますか。
今回の感染拡大が米軍基地からオミクロン株が広がったことにあるのは県の遺伝子分析の結果でも明らかとなっています。私は1月5日に外務省沖縄事務所の橋本尚文沖縄担当大使に対して、米軍関係者の行動規制をさらに強化することや、マスクの着用の徹底、さらに必要な情報を日本側の関係機関にきちんと提供することを求めました。なかにはマスクをしないで基地の外を出歩いている米軍関係者もいるとの話も伝わってきましたので、綱紀を正すよう求めました。
家庭内で感染が広がることを防ぐために名護市国際交流会館に部屋を確保して、万が一家庭内で感染者が出た時に宿泊できるようにしました。ワクチンの接種率を高めるように、接種した市民には抽選で商品券が当たる取り組みをしましたが、こうした成果で県全体の接種率は6割台にとどまるなかで、名護市は7割を超えています。
コロナ対策は気を緩めることはならないと思っています。今後は市役所内にコロナ対策室を新設し、関係機関と連携をしっかり取りながら、迅速な対応を取っていきたいと考えています。3回目の接種に向けた準備を急ぐことや、感染拡大でダメージを受けた市内の企業や離職された市民のみなさんをサポートすることにもしっかり取り組むことも必要です。
―――名護市長選挙では普天間飛行場の辺野古への移設の是非が争点だとされています。この問題については賛否を明らかにしていませんね。
まず、私が申し上げたいのは、基地負担の軽減を求める立場は沖縄県民に共通の願いだということです。全国の米軍専用施設の70%以上が集中するなど、沖縄県に基地が偏在していることは明らかです。いまも米軍関係者による事件や事故はあとを絶ちません。地位協定の改定や米軍基地の段階的な整理縮小を求める立場は私も同じです。
ただ、この辺野古の問題については私が当選した4年前の前回選挙と状況が変わっていません。国と県による係争が続いたままです。裁判所が法律に基づいて判断を下すのを待ち、結果が出ればそれに従うのが行政の長のあるべき姿ではないでしょうか。係争が決着を見るまではこれを見守るより他ないとの立場です。
辺野古移設の問題については多くのメディアの方々が質問をされますが、私が強調したいのは、名護が抱える課題は基地問題だけではないということです。
名護を含む本島の北部は、平均所得や失業率などで中部や南部に比べると、まだまだ十分な数字ではありません。経済を建て直すことは私たちにとって切実な問題ですし、コロナ対策は待ったなしです。観光業や飲食業はコロナで大きなダメージを受けました。
こうした課題に取り組むためには、政府と対立してばかりではダメなのではないでしょうか。政府と交渉しながら粘り強く成果を勝ち取っていく姿勢が必要です。基地負担の軽減についても同じことが言えると思います。
―――名護が抱える課題は基地問題だけではないとのことですが、具体的にどんなことに取り組んでいきたいと考えていますか。
中心市街地の再開発は名護全体に賑わいを取り戻すのに欠かせないと考えています。バスターミナルや高速船の乗り場を中心市街地に新たに整備して、本島北部全体の交通の結節点とするのです。高齢者のバス無料化やコミュニティバスの導入で交通弱者の市民のみなさんにも目配りもします。コミュニティバスはすでに実証実験を市内でやっていますので、早期に本格化できるはずです。
名護東道路は昨年7月に全線が開通しましたが、さらに本部半島方面への延伸を目指しています。先月24日に東京で斉藤鉄夫国交大臣に実現を強く要望したところ、延伸に向けて検討するとの約束を頂きました。
さらに、北部基幹病院の早期整備にも力を入れて取り組みます。これは名護市だけでなく北部市町村の悲願です。これまでなかなか進んで来ませんでしたが、医師会ともしっかり連携して整備を進め、特に周産期医療をはじめとする地域医療を充実させることで、安心して子どもを産んで育てることができる環境を整えたいと思います。
―――1期目に実現した保育費、学校給食費、子ども医療費の無償化はどうしていきますか。
これら無償化は私が市長に就任して真っ先に取り組んだもので、1年目に実現しました。やはり子育てをしやすい環境を整えるためです。もちろん、この無償化はこれからもしっかりと続けていきます。そのためには年間7億円の予算が必要ですが、責任持って財源を確保していきたいと思います。相手側の岸本洋平さんもこれらの無償化を続けると主張されているようですが、財源はいったいどこから持ってくるつもりでしょうか。