新春インタビュー 玉城デニー知事「あるべき沖縄の姿探求」

 
沖縄県庁

―新たな沖縄振興計画

 沖縄振興特別措置法に基づく高率補助制度、沖縄振興交付金制度、沖縄関係税制、政策金融などの特別措置については、沖縄が抱える特殊事情から派生する政策課題に対応するためのものだ。

 これらの政策課題が解消されたという実感が得られるまでは継続する必要がある。県では、沖縄21世紀ビジョンに掲げる、県民が望む5つの将来像を掲げてさまざまな施策を展開してきた。

 今年から始まる新たな振興計画では、沖縄21世紀ビジョンの後期計画として、30年までに目指すとした、同ビジョンに描かれた、あるべき姿をさらに探求していきたい。

 持続可能な沖縄の発展と、誰一人取り残すことのない沖縄らしい優しい社会を目指し、安全安心で幸福が実感できる島を形成し、一人一人が本当に実感できる、そういう沖縄の将来を作っていきたい。

インタビューに答える玉城デニー知事(写真撮影時のみマスクを外しています)

―沖縄振興予算案が2684億円に減額となったことについて

 まずは、予算の復活折衝に努めていただいた西銘沖縄担当相、沖縄振興について議論して後押しをいただいた自民党沖縄振興調査会の方々にお礼を申し上げたい。

 これから新たな沖縄振興のための特措法の議論などを進めていくが、2022年度の予算は従来よりかなり減額になったことは、昨年予算の発表を聞いた時は非常に残念であるとコメントした。

 コロナウイルスが発現するまでの間、沖縄県は振興計画の着実な推進と、3000億円規模の予算による市町村の独自の取り組みによって、有効求人倍率や失業率の大幅な改善がみられたことから、この制度設計と振興計画と予算建ては非常にうまくいっているのだということが、実証できていた。

 コロナから立ち上がる、しかも新たな振興計画がスタートする22年度から、沖縄振興予算の減額が始まっていくということについては、国が沖縄の発展可能性をどのように検証したかということについて、国に問いただしていかないといけない。

 基地を置いているから予算を増やすとか、減らすという議論は、馴染まないと思う。基地が返還された跡地の経済効果、雇用効果が何十倍、何百倍にもなっているというその実証済みの成果を前提とするのであれば、やはり、基地は沖縄発展の阻害要因であり、県経済をフリーズさせている大きな問題であると言わざるを得ない。

 基地問題は基地問題として明確にその問題解決のための方向性を政府に求め、さらに沖縄が発展していくための計画と、計画に見合った予算ということもしっかりと求めていきたい。これは22度以降もそのようなことは変わらず主張していくべきだろうと受け止めている。

―尖閣諸島への対応

 県は、かねてから海上保安庁に対して、尖閣諸島周辺海域の安全を守るためにしっかりと監視を続けていただいていると認識している。さらに、国や政府に対しては、平和的外交の下で、この尖閣諸島を含む周辺海域を安心安全な海域にしていただくようこれまでも求めてきているし、これからもそのような取り組みや方針などに沿ってしっかりと安全な海を確保していただきたいと考えている。

「豊かさ実感できる社会目指す」

―復帰50年を迎え、沖縄の発展と課題について

 これまで5次50年にわたって沖縄振興開発計画、および沖縄振興計画などによって、空港や港湾、道路、ダムなどの社会資本整備は着実に進んできた。

 他方で、一人当たりの県民所得については、未だに全国最低の水準にあるなど、まだまだ道半ばにある。さらに、離島の条件不利性や米軍基地問題などの沖縄の特殊事情から派生する固有の課題に加え、子どもの貧困の問題、雇用の非正規率の多さの改善など、重要性を増した課題や、ヤングケアラーなどの新たに生じてきた課題なども明らかになってきている。

 安全安心で県民が幸福を実感できる島を実現していくために、自立的な発展を引き続き目標とし、県民一人一人が豊かさを実感できる社会の構築に向けて今後の沖縄振興にも全身全霊で頑張っていきたい。

守礼門

―復帰から50年間で、県民意識の変化は

 昭和から平成、平成から令和と、時代が変遷している。今は、デジタルジェネレーションというように、生まれたときからデジタル技術が存在し、生活環境も変わってきている。それは世界的な流れでもある。 

 今でも変わらず若者が持っている考え方の一つは、私たちはウチナーンチュであり日本人であるということだと思う。生粋のウチナーンチュだと堂々と言える時代になっている。多様性のある社会になっている。より自分のアイデンティティとして堂々と言って、自分の信念や生き方について自信を持つことができる時代になりつつあるのではないかと思う。

―知事が目指す自立型経済の定義は

 「自立型経済」が何を示すかというと、十分な税収と企業の経済活動による好循環を域内で循環させることができることが、私が考えている自立型経済のスタイルだ。今は、移入型の経済が復帰前、以降も続いているため、第3次産業に占める雇用の状況が依然として大きなウエイトを占めている。

 できる限り、製造や農林水産業など第1次産業、第2次産業の可能性を発展させながら、第3次産業も十分充実させていくこと。そういう基盤整備と方向性を予算、計画でしっかり示していくことによって、より自立型と言える経済の形を作っていけることができると思う。

 それまでは当分の間、高率補助制度や、税の優遇などを、自立型経済に向かうまでの基盤形成のための仕組みとしてさらに活用していきたいと思う。

「辺野古工事は直ちに中断を」

―公約に掲げる辺野古基地建設阻止をどう実現していくのか

 辺野古新基地建設に反対する民意は、これまでの私の県知事選挙や、故翁長雄志前知事の県知事選挙でも争点を明確にして反対の姿勢を示し、選挙で当選という結果を与えていただいた。さらには、辺野古の埋立の賛否にしぼって行われた県民投票でも、反対の民意が示された。

 民主主義の手続きにのっとった正当な民意として認めるのであれば、政府は直ちに辺野古の新基地建設の工事を中断し、米国政府及び沖縄県と対話の場を設けるべきだと思う。普天間基地の1日も早い危険性の除去のためには、直ちに工事を中断し、沖縄県内ではない、県外国外への長期ローテーション、まずは訓練から、さらには、ベースとなる場所が必要であるということであれば、県外国外の自衛隊基地を含めた、移転可能性を探求することも、私は「辺野古が唯一の解決策」というデッドロックから脱することができる道筋になるだろうと思う。

―離島振興について

 「離島振興なくして沖縄の振興なし」というのは、私の政策の大きな柱の一つだ。宮古八重山を含む県内37の有人離島において、生活基盤の安定、医療の提供、定住条件の整備などについては、これからもしっかり進めていきたい。

 2030年の再生可能エネルギー比率18%を目指すという県のエネルギーイニシアティブでも、特に離島においては、100%再生可能エネルギーが達成できるような実証実験を行っていきたい。

―知事選の争点は

 われわれが考える選挙の争点は、経済的な問題、コロナに始まる感染症や医療の問題、子供の貧困など社会的な格差の問題、ヤングケアラーなどの課題も浮上している。まだ十分に取り組まれていない諸課題についても、どう解決していくのかの方針や計画を示すことが県知事選の大きな争点の一つ。

 基地問題も重要な課題だ。その問題解決に向けた考え方や取り組み方を県民に示すことも大切な争点なると考えている。

(記事・写真 宮古毎日新聞)

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