新春インタビュー 西銘恒三郎沖縄担当相「強い沖縄経済目指す」

 
西銘恒三郎沖縄担当相(インタビューへの回答は、書面で行われました)

2021年を振り返って

 2021年も新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの国民、県民が、経済、暮らし両面において、厳しい状況にあったと認識している。ワクチン接種などにより、感染者数は減少傾向が続いていたが、今般オミクロン株の感染により、引き続き感染対策に万全を期す必要がある。閣僚の一員として、国民、県民の声をしっかりと聴き、困難を何とか乗り越えていきたい。

 個人的には、第49回衆議院議員選挙において、多くの方々の御支援をいただき、また国政の場に送り出していただいたことに改めて感謝申し上げる。そして、第一次、第二次岸田内閣において、復興大臣、福島原発事故再生総括担当大臣、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)を拝命した。改めてその重責に身の引き締まる思いである。

 復興大臣として、現場主義を徹底し、被災者に寄り添いながら、被災地の抱える課題の解決に向けた取り組みを着実に進めてきた。私自身、事情が許す限り被災3県に入り、地域ごとの課題を丁寧にお伺いしてきたほか、国際教育研究拠点の法人形態の決定等、様々な施策に取り組んできた。

 沖縄振興においても、地元の御意見を丁寧にお伺いすることが重要と考え、沖縄担当大臣として改めて県内の各市町村を訪問し、振興事業の現場の視察や首長等との意見交換を行っているところであり、年末までに11市町村を訪問した。

 さらには、北方対策についても、10月に北方領土隣接地域を訪問した際に、元島民の方々を始めとする皆様から様々なお話を伺い、それらを踏まえ、若い方々の理解と関心を深めるための取り組みにも着手したところである。

「沖縄振興予算、最大限の効果発揮目指す」

―沖縄振興予算、税制、沖縄公庫

 22年度の沖縄振興予算案においては、総額2684億円を計上している。これは、財務省から、当初、約2400億円という厳しい予算案が提示されていたところ、私自身が財務大臣と折衝を行い、一括交付金について、281億円を積み増した結果、2684億円となった。

 この中では、離島の振興、北部振興、子供の貧困対策や基地跡地利用など、今後の沖縄振興における重要分野について予算を増額して計上するとともに、産業競争力の強化・産業人材の育成に係る予算を新規に計上することとしている。公共事業等についても、国として必要と考える所要額を計上している。この予算が、21年度補正予算と合わせ、最大限の効果を発揮するよう活用していきたい。

 22年度の沖縄振興税制に係る13件については、概ね要望どおり認められた。このうち、沖縄の地域・特区税制については、一層効果的な措置とするための認定制度等の導入や、経済・社会情勢の変化等に対応するための対象事業等の改廃などが認められた。

 また、酒税軽減措置の廃止に向けた軽減税率の段階的引下げのほか、観光の魅力向上、離島の振興、移動や物流コストの低減、エネルギーの安定的かつ安価な供給など、産業振興や県民の暮らしに直結する税制措置の延長・拡充が認められた。こうした税制措置が積極的に活用され、沖縄経済の発展や県民生活の安定に一層の効果を発揮することを期待している。

沖縄振興開発金融公庫

 沖縄振興開発金融公庫による政策金融は、国の財政措置とともに沖縄振興策における車の両輪として、復帰以来、沖縄振興に貢献してきたと認識している。そうした中、沖縄公庫の存続を求める強い要望が寄せられ、私も大臣として沖縄公庫の取引先を訪問する中で、改めて公庫が沖縄振興に大きく貢献していることを実感した。

 沖縄経済は新型コロナウイルス感染症により大きな打撃を受け、未だその回復途上にある。沖縄経済の復活に向け、また今後、「強い沖縄経済」を構築する上で沖縄公庫の役割は極めて重要である。

「復帰50年 歴史的意義を想起する契機に」

―復帰50年、沖縄経済、沖縄振興特別措置法

 22年、沖縄は本土復帰から50年の節目を迎える。この50周年を、沖縄の本土復帰の歴史的意義を想起し、沖縄の歴史に思いを致す契機としたいし、沖縄の魅力や可能性を内外に発信することも重要だと考えている。

 本土復帰以降、政府は、社会資本整備や産業振興など各種沖縄振興策に取り組んできた。沖縄県民のたゆまぬ努力もあり、県内総生産が全国を上回る伸びを見せるなど、沖縄経済は着実に成長してきた。

 しかし、依然として一人当たり県民所得は全国最下位であり、子供の貧困に見られる貧困の世代間連鎖の防止、産業の高付加価値化など各分野の課題も存在している。さらに、新型コロナウイルスの影響により、観光をリーディング産業とする沖縄経済の脆弱性も明らかになった。

 感染対策に万全を期しながら、また沖縄公庫等による足元の資金繰り支援や経営支援に引き続き努めながら、観光を始めとする沖縄経済の再生に取り組んでいく必要がある。

 こうした折、昨年末の臨時国会での岸田総理の所信表明演説において、総理は「強い沖縄経済」を作るための取り組みを進める旨表明された。12月24日に、私として「政策パッケージ」を発表したが、このような総理の考えを踏まえ、「強い沖縄経済」を実現するための政策手段を取りまとめたものである。「強い沖縄経済」を実現するためには、域外競争力の強化や労働生産性の向上、外部変化に強い産業の育成、民間活力の活用などが重要と考えている。

 本年早々に、観光や農林水産業を始めとする重点検討分野を設定し、有識者や事業者などの方々からのヒアリングを開始するとともに、車座対話、市町村訪問も引き続き実施しながら検討を進める。その上で、来年5月を目途に具体的な戦略として取りまとめたいと考えている。

 また、「強い沖縄経済」を作るための法制的な基礎となる沖縄振興特別法等の一部を改正する法律案(仮称)を通常国会に提出し、期間を10年延長するとともに、上述のとおりの予算、税制、政策金融といった政策手段を最大限に活用し、域外競争力の強化、生産性の向上等に向けた取り組みを進めていく。

沖縄担当相就任後の初来県で経済団体代表らとの懇談会であいさつする西銘氏=2021年10月9日、那覇市 

―北部、離島、農業

 併せて、北部、離島といった地域経済の振興をしっかりと図っていく必要があり、22年度予算案の北部振興事業(非公共)、離島活性化推進事業はそれぞれ前年度比で約10億円を増額して計上している。

 北部地域の振興については、県土の均衡ある発展を図る観点から重要であり、これまで、産業の振興や定住条件の整備に資する事業を実施してきた。北部地域が、世界自然遺産の登録や名護東道路の開通など様々な好機を着実に捉えつつ、更なる発展が可能となるよう引き続き支援していく考えである。

 沖縄の離島は広大な海域に散在し、本島から遠隔にあるなど様々な条件不利性を有している。不利性に起因する地域課題にしっかりと目を向け、その解決に向けて、離島活性化推進事業も活用しつつ引き続き支援していく考えである。また、岸田内閣においても「デジタル田園都市国家構想」の検討が進められているが、島嶼県である沖縄はデジタル化の恩恵は他の都道府県にもまして大きいものと考えている。デジタル化の推進を沖縄の地域課題の解決や県民生活の向上等につなげることができるように取り組んでいきたい。

 沖縄の観光業は、以前より平均滞在日数、一人当たり消費額の伸び悩みが課題とされてきた。新しい生活様式に配慮し、沖縄の自然・文化・伝統をいかした新たな観光サービスの開発支援など、観光の質の向上のための取り組みを支援していく。

 黒糖の安定供給、販売部門の強化など在庫問題の対応について地元の取り組みを支援していく。沖縄の農業は産出額1000億円程度が継続しており、何とか、1200、1300億円に持っていきたいと考えている。上述の「強い沖縄経済」に向けても、農林水産業は重点検討分野の一つになるものと考えており、精力的に議論していきたい。

―軽石対策

 軽石の被害に関しては、関係省庁が連携して対策会議を開催し、政府一体となって対応している。災害復旧事業等に係る21年度補正予算における予算措置や地財措置について、関係省庁がスピード感をもって対応している。現地では沖縄総合事務局が局を挙げて対応しており、私としても沖縄の地元をよく知る立場として、関係省庁と連携して役割を果たしていきたい。

「2022年は重要な年」

―2022年の意気込み

 22年は重要な年になる。復興大臣としては、まず、22年度復興庁予算案においてALPS処理水の処分に伴う対策、特定復興再生拠点区域外における対応、国際教育研究拠点の新設等の重要な予算が計上されているところであり、予算の成立に向けて確実に取り組んでいく。また、「創造的復興の中核拠点」となる国際教育研究拠点の新設に向け、通常国会に必要な法案の提出を図るなど、必要な準備を進めていく。

 北方対策担当大臣としては、22年度こそ北方四島交流等事業の再開に向けて必要な準備を進めるとともに、若い世代への啓発について若者自身のアイデアも取り入れ、デジタルも活用しながらしっかりと進めていきたい。

 沖縄担当大臣としては、5月15日に、沖縄の本土復帰から50年という大きな節目を迎える。22年度予算案の審議、沖縄振興特別措置法等の一部を改正する法律案の提出・国会審議、法成立後の沖縄振興基本方針の改定、沖縄振興計画の策定など、年明け以降、今後の沖縄の行方を左右する重要な局面が続くこととなる。沖縄出身・選出の議員として、こうした重要な時期を担当大臣として迎えることとなり、感無量であると同時に改めて重い責任を感じている。沖縄の更なる発展に向け、可能な限り、様々な現場に足を運び、人々のお話しを伺いつつ、沖縄振興に全力で取り組んでいきたい。

 22年は政治的にも重要な年になる。自分の役目をしっかりと務めていきたい。

(記事・写真 宮古毎日新聞)


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