迷走し始めた次期振興計画 本土復帰50年で沖縄はどこへ向かうのか

 
沖縄県庁

 「出てくる素案は、骨子案とは少し趣の違うものになるかもしれない」

 沖縄県のある幹部は、そう耳打ちする。素案とは、ゴールデンウィーク明けにも公表される次期沖縄振興計画の素案のことだ。

 今年度で切れる現行の振興計画に代わる次期振興計画をめぐっては、今年1月に県が骨子案を公表して、国との調整を重ねてきた。さらに、骨子案について県内の経済界や有識者らなどから意見を集め、4月22日には「新たな沖縄振興のための制度提言」も公表している。

「このままでは国に主導権を握られてしまう」

 だが、そもそもその「骨子案」に対する評価は散々だ。沖縄県の政策に関わるある官僚は、「骨子案は一行も読んでいない。読む価値もない」とばっさり。県の骨子案を相手にせず、霞ヶ関が直接書き直すと言わんばかりだ。民主党政権下で振興計画の策定は国から県に主体が移ったが、県庁内からは、「このままでは計画の策定はおろか、沖縄の進むべき方向性も国に主導権を握られてしまう」という焦りの声が聞かれる。

 骨子案は、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れ、「誰一人取り残さない社会」「安全・安心の島」を目指すとする。だが、新聞各紙の社説を見ると、玉城県政に批判的な産経新聞が「理念先行で具体性に乏しく、十分な実効性があるとは言い難い」と手厳しいのは予想がつくが、地元紙の沖縄タイムスも「振興手法などの継続・踏襲が目立ち、新しさに欠ける印象だ。制度改革への強い意志は感じられない」とする。

 次期振興計画がスタートする来年は、沖縄の本土復帰から50年という節目の年だ。第1次から第5次に至るこれまでの振興計画で、理念は復興から開発、振興へと移り変わってきた。

 現計画である「沖縄21世紀ビジョン基本計画」の策定に深く関わった県の元幹部は、「時代は変わり、もはやこれまでのような振興計画はなくてもいい。代わりに基地の跡地整備法などをつくり、大胆に未来を構想すべきではないか。それくらいの議論があっていい。これからの沖縄に必要なのは、国に何をしてもらうかではなく、日本のために何ができるかというビジョンです」と語る。

 SDGsを新たな柱に据えたとする今回の骨子案だが、いまから23年前、その理念はすでに県庁の議論の俎上にあった。1998年12月10日、知事選で当選した稲嶺恵一氏が初登庁したその日に、普天間跡地開発を議論する国際ワークショップが県庁講堂で開かれた。そのタイトルは「持続可能な開発・沖縄モデルをめざして」。国連で2015年にSDGsが目標に掲げられる17年も前のことだ。「我々は、未来図をすでにエコロジーとエコノミーの調和においていた。こうした気概を持って国の官僚とも議論を戦わせてきたのが、当時の県職員の姿だった」(元幹部)

 元幹部は、「全島電線地中化」「那覇空港民営化への条件整備」「陸上自衛隊那覇基地の返還と那覇軍港跡地との一体的開発」「キンザー跡地と浦添地先の一体的開発」「普天間跡地セントラルパーク構想と県庁移設」など、これまでにも大胆な提言を繰り返し行ってきた。それだけに今回の骨子案に物足りなさを覚えるという。

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