迷走し始めた次期振興計画 本土復帰50年で沖縄はどこへ向かうのか
- 2021/4/27
- 政治
副知事退任は計画策定の難航の証しか
昨年12月30日、読売新聞は「2022年度以降の沖縄振興計画について、沖縄県が米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の跡地と那覇空港を一体的に活用する『臨空臨港都市』の形成を軸に検討していることがわかった。年度内に計画の骨子案を公表する」とのスクープを打った。
だが、1月に公表された骨子案では、「臨空臨海都市の形成」という文字は見られるが、どこをどう見ても軍港跡地と空港の一体活用が振興計画の軸になっているとは読めない。これまでにもHUB沖縄で、「軍港の移設問題を棚上げし、跡地利用だけを強調するような計画の現実性は乏しい」とする元県幹部の指摘を伝えたが(https://hubokinawa.jp/archives/4224)、まだ骨子案の段階ではあるにしても産経の社説のような「理念先行で具体性に乏しい」という声が噴出しているのは事実だ。
県民や国と深い議論を重ね、満を持してつくりあげるべき振興計画だが、このままでは軸となるべき目玉のないものとなってしまいかねない。なぜこのような迷走が始まったのか。ある県の幹部はこう明かす。
「振興計画の策定を担当していた富川盛武副知事が計画を出したくないと言い出したと言われています。当初は気概をもって臨んだものの、国との議論の中でことごとく“現実”を突きつけられ、立ち往生したようです。困った玉城デニー知事が謝花喜一郎副知事と相談の上、3月で富川副知事が退任することが決まったと聞いています」
県政を取材する記者もこう認める。
「富川副知事は確かに3月が任期満了でしたが、骨子案の後にも素案のとりまとめ、本計画の策定と続く。振興計画を担う富川副知事の続投は既定路線だったのですが、方針転換があった」
この混乱のあおりを受けたのか、県庁職員の4月1日付けの異動で、異例の人事があった。振興計画の策定を担当する企画部統括監が保健医療部参事監に、企画調整課長が県立看護大学事務局長にそれぞれ異動したのだ。
「昇進をともなうので目立ちませんでしたが、見る人が見れば左遷とわかります。富川副知事の件はわかりやすい話しですが、この人事は我々の間でも謎と言われています」(前出の記者)