「社会を変える大きなチャンスに」 温暖化対策・持続可能性を考えるゼロエミッションラボ沖縄

 
沖縄県のHPより

 鹿谷さん「伝え方の課題も大きいと思います。従来の温暖化対策は『~するな』『~を減らせ』というような発信ばかりで、『環境への配慮=不便になる』というイメージが固定化されてきました。

 でも、これからの対策は全く違います。例えば、車は電気自動車に切り替えつつ、子どもや年配者にも使いやすい公共交通機関を整備してより便利にすることで、渋滞や排気ガスのない街づくりができる。発電のための石炭やガソリンなど化石燃料の購入に支払ってきたお金を、地域の再生可能エネルギーに切り替えることで、地域経済を回していくこともできる。この点はもっと注目されるべきです」

 杉山さん変化している環境や社会に対して、これまでの手法や考え方を変化させることへの抵抗感や恐れみたいな気持ちが人々の中にかなりあるんだと思います。やはりまだ気候変動の現実と温暖化対策のイメージが共有できていないことが大きな要因でしょうね」

 ―少し身近なところで言えば、先にも出た交通機関の話は“車社会”の沖縄では生活に直結する問題ですね。最早1人1台がデフォルトになっている状況下では、環境のためと言っても車がないと生活できないし…ということになってしまいます。

 杉山さん「これまでずっと『車が多いから道路を広げる』という発想だったと思うのですが、これは環境にも良くないのはもちろんのこと、市民生活にも問題をきたします。道を広げたり延長したりしたからといって、渋滞がゼロになったケースはほとんど無いと思います。

 道路の拡充よりも、歩く人の多い街にした方が経済活動が促されるという事例や研究は、国内外問わずいろんな所で言われています。持続可能性という観点からも、今後は道路を作るよりも車に頼らないで済むまちづくりを目指す方向にシフトしていった方がいいんじゃないでしょうか」

 ―今後どのような活動を展開していく予定ですか。

 鹿谷さん「やはり、社会全体で温暖化対策を進めるために行政と市民とをつなげることが今の1番の課題です。行政は気候非常事態宣言に基づいて、実効性のある施策展開する。それを県民へきちんとアナウンスしてもらう。県民も対策の方向性を理解して協力したり、施策について一緒に知恵を絞ったりということが必要になってきます。

 まだ温暖化対策がきちんと理解されていないとはいえ、環境を考えるきっかけになるSDGsのような新しい言葉が社会に定着しているというのは今までにない事態です。だから、逆に言えば変わるための大きなチャンスでもあるんです。

 先ずはイベントなどで分かりやすく環境問題を伝えて、関心を持ってもらうことからですね。やれることはたくさんあるし、地道に続けていくしかないと思っています。

 ゆくゆくの個人的な“野望”としては、子どもたちの必修科目に『地球』という科目を加えたい。エネルギーや資源の循環、生態系などを学ぶ機会を確保したいですね。教育によって土台を築くことで今後の社会のあり方も変わっていくと思います」

 杉山さん「持続可能な生活スタイルの選択肢を増やしていきたいですね。現状だとわざわざ高いお金を出して選ばないといけないので、その状態を変える必要がある。県内での再生可能エネルギー政策の展開や公共交通システムなどをテーマにして、いろんな人たちと話し合える機会を積極的に作っていきたいと考えています」

 ゼロエミッションラボ沖縄が協力し、持続可能な社会について考えるオンライン会議が2022年1月15日に開催される。鹿谷さんが進行役を務め、話題提供者として県環境再生課の職員も参加する。参加費は無料で、zoomを使用する。問い合わせは主催の県公衆衛生協会まで。

■関連リンク
ゼロエミッションラボ沖縄(ZELO)
沖縄県の「気候非常事態宣言」実現に働きかけた市民活動 ‖ HUB沖縄

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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