「改善状況は十分とは言えない」 沖縄県子どもの貧困対策最終評価

 
県庁

 2016年度に開始されて本年度が最終年度となっている「沖縄県子どもの貧困対策計画」。22年度からの5年間を期限とする次期計画の骨子案の議論が現在進められている。次期計画の策定を前に、県は11月に現行計画を総括する最終評価報告書を発表した。

 報告書では現計画で掲げていた41指標のうち、12指標を「達成」、25指標を「改善」と判断している。「困窮世帯の割合」については、未就学児と小中高生の全てのライフステージで改善しているものの、目標値は達成できなかったため「改善状況は十分とは言えない」としている。

「一定の成果」ありつつもなお残る課題

 現計画は全国の相対的貧困率13.9%(2016)に対し、沖縄は2倍以上の29.9%(2014)という厳しい状況を受けて、2016年3月に策定された。「社会の一番の宝である子どもたちの将来がその生まれ育った環境によって左右されることなく、夢や希望を持って成長していける社会の実現を目指す」ことを基本理念に、待機児童解消、就学援助、居場所作りなどの各種支援策を展開してきた。

 県は現計画の成果として、保育所等利用待機児童数の減少、放課後児童クラブ平均月額利用料の低減、小中学生の基礎学力の上昇、高校・大学等の進学率の上昇、正規雇用者の割合の増加、困窮世帯の割合の低下などを挙げている。

県の最終評価報告書より

 ただ、困窮世帯の割合については上述したように十分な改善とは言えず、全国との差は縮小したものの依然として「課題が残されている」。直近値は目標値20%に対して未就学児が22.0%(2020年度)、小中学生が25.0%(2018年度)、高校生は20.4%(2019年度)となっている。

 

次期計画に向け指標見直し進める

 現在議論が進められている次期計画策定に向け、県は児童の権利、子どもの権利の尊重を念頭にして「子どもの『将来』だけでなく『現在』に向けた対策」として貧困対策を推進することを今後の施策展開の方向性として示している。また、施策効果などの検証のための指標見直し、実効性確保に向けた目標数値の設定し直しなども検討するという。

 さらに、新型コロナウイルス感染症拡大によって県経済や県民生活に大きな影響が及んでいることで、非正規雇用者やひとり親家庭が困難な状況に陥りやすい傾向にある現状を踏まえた対策に取り組む必要性も強調した。

 新たな指標については有識者会議などでの議論を経て、沖縄子ども調査による困窮世帯の割合、公共料金の未払い経験、食料・衣料が買えない経験、子どもがいる世帯の世帯員で「頼れる人がいない」と答えた人の割合などが次期計画の骨子案に示されている。

 加えて、これまで当事者である子どもたちから声が上がりにくく、問題として俎上に上がってこなかった「ヤングケアラー」への支援対応も新たな課題として盛り込まれている。

 次期計画は最終報告書を踏まえて、21年度中に策定される予定だ。

Print Friendly, PDF & Email

真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

この著者の最新の記事

関連記事

おすすめ記事

  1. 試合後の挨拶で声を詰まらせる琉球コラソンの東江正作監督=2月23日、那覇市の沖縄県立武道館(長嶺真…
  2.  公立大学法人名桜大学(名護市、砂川昌範学長)と、沖縄本島北部の新テーマパーク事業…
  3. 屋那覇島 2015年著者撮影  34歳の中国人女性が「私が買った」とSNSにアップしてから、…
  4. 沖縄本島北部の伊是名村に属する無人島・屋那覇島。周囲は浅瀬で、エメラルドグリーンの海が広がっている…
  5. 座間味島付近の上空で目撃された白い球体=2022年4月28日午前(山本拓海さん提供)  偵察…

特集記事

  1. 練習中も大会本番と変わらない気迫で形を打つ喜友名諒=2022年11月撮影  東京五輪で初採用…
  2. 下地島空港  今年1月、在沖米海兵隊が人道支援・災害救援を目的とした訓練のため宮古島市にある…
  3. OTS台北事務所の與那覇正雄所長=1月9日、台北市内  昨年6月に訪日観光客(インバウンド)…
ページ上部へ戻る ページ下部へ移動 ホームへ戻る 前の記事へ 次の記事へ