「改善状況は十分とは言えない」 沖縄県子どもの貧困対策最終評価
- 2021/12/23
- 社会
2016年度に開始されて本年度が最終年度となっている「沖縄県子どもの貧困対策計画」。22年度からの5年間を期限とする次期計画の骨子案の議論が現在進められている。次期計画の策定を前に、県は11月に現行計画を総括する最終評価報告書を発表した。
報告書では現計画で掲げていた41指標のうち、12指標を「達成」、25指標を「改善」と判断している。「困窮世帯の割合」については、未就学児と小中高生の全てのライフステージで改善しているものの、目標値は達成できなかったため「改善状況は十分とは言えない」としている。
「一定の成果」ありつつもなお残る課題
現計画は全国の相対的貧困率13.9%(2016)に対し、沖縄は2倍以上の29.9%(2014)という厳しい状況を受けて、2016年3月に策定された。「社会の一番の宝である子どもたちの将来がその生まれ育った環境によって左右されることなく、夢や希望を持って成長していける社会の実現を目指す」ことを基本理念に、待機児童解消、就学援助、居場所作りなどの各種支援策を展開してきた。
県は現計画の成果として、保育所等利用待機児童数の減少、放課後児童クラブ平均月額利用料の低減、小中学生の基礎学力の上昇、高校・大学等の進学率の上昇、正規雇用者の割合の増加、困窮世帯の割合の低下などを挙げている。
ただ、困窮世帯の割合については上述したように十分な改善とは言えず、全国との差は縮小したものの依然として「課題が残されている」。直近値は目標値20%に対して未就学児が22.0%(2020年度)、小中学生が25.0%(2018年度)、高校生は20.4%(2019年度)となっている。
次期計画に向け指標見直し進める
現在議論が進められている次期計画策定に向け、県は児童の権利、子どもの権利の尊重を念頭にして「子どもの『将来』だけでなく『現在』に向けた対策」として貧困対策を推進することを今後の施策展開の方向性として示している。また、施策効果などの検証のための指標見直し、実効性確保に向けた目標数値の設定し直しなども検討するという。
さらに、新型コロナウイルス感染症拡大によって県経済や県民生活に大きな影響が及んでいることで、非正規雇用者やひとり親家庭が困難な状況に陥りやすい傾向にある現状を踏まえた対策に取り組む必要性も強調した。
新たな指標については有識者会議などでの議論を経て、沖縄子ども調査による困窮世帯の割合、公共料金の未払い経験、食料・衣料が買えない経験、子どもがいる世帯の世帯員で「頼れる人がいない」と答えた人の割合などが次期計画の骨子案に示されている。
加えて、これまで当事者である子どもたちから声が上がりにくく、問題として俎上に上がってこなかった「ヤングケアラー」への支援対応も新たな課題として盛り込まれている。
次期計画は最終報告書を踏まえて、21年度中に策定される予定だ。