貧困率が“絶対”ではない 沖縄の「子どもの貧困」新たな指標の必要性とは

 

 貧困率が全国ワーストの沖縄県が取り組んでいる子どもの貧困対策。2022年度から始まる新たな計画の策定のため、県は16~21年までの5年間に実施した評価と次期計画の骨子案をまとめている。県が11月に発表した最終評価報告書では、計画で掲げていた41指標のうち12指標で「目標達成」、さらに25指標で「改善」という結果が報告された。

 ただ一方で、計画の中で設定されている指標が「どれだけ実態に即しているのか」ということはこれまでも議論され、さまざまな意見が交わされている点でもある。貧困を捉える際の指標設定や現状・課題について、県の有識者会議のメンバーでもある横江崇弁護士に話を聞いた。

抜け落ちている「機会喪失」という観点

 —これまでの5年間の県の貧困対策を振り返った時に、どんなことが気になりますか。

「本当に根本的な所になるのですが、そもそも『貧困』とは何なのか、貧困を無くすとはどういうことなのかということを再確認しなければならないと思います。というのも、現在沖縄県が指標の一つとしている『貧困率』だけでは『貧困』の実態を正確に把握できないからです。『貧困率』は、所得がどれくらいかということで判断するので、例えば資産がどれくらいあるのかは反映されません。

 もちろん『貧困率』は1つの指標として有益ではありますが、この『貧困率』という数字が決して“絶対”ではないということは気に留めておく必要があります。

 とてもシンプルな話ですが、所得を上げなければ貧困は解決しません。所得は給料ですから、その意味では民間の力が大事な要素になってきます。だから行政の力でそれを左右するのは難しい。最終評価報告書案では細かな部分も含めて以前よりは良くなった項目もありますが、全体で見るとこれまでの県の取り組みで貧困率が改善したとまでは言えないし、根本的な意味で困窮世帯の割合を下げるということはできていないでしょう」

県の子どもの貧困対策について話す横江崇さん

 —指標も含めて「子どもの貧困」の定義の見直しが必要ということでしょうか。

「そうだと思います。改めて言えば、子どもの貧困とは『経済的な理由によって、発達の諸段階から色んな機会が失われてしまって、それによって現在ないし将来に不利益を及ぼすこと』です。ここで言う機会を喪失させないことが子どもの貧困を無くすということにおいて重要な論点になります。

 こうした意識は経済指標の数字だけで追っているのが現状で、幅広い経験や体験などの機会を保障できているかという意識は残念ながらまだまだ足りないです。実態のきちんとした把握と指標の設定が必要なんです。

 そこで子どもたちの機会がどのように失われているのかという観点から設定したのが『剥奪指標』と呼ばれるものです。この考え方の一部は新しい対策計画で採用される可能性があり、生活実態の中で先に述べたような機会を得られているかどうかを表すための役割を果たすと思います」

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