瓦割り専門店「割手」に突撃レポ!割れば割るほど文化を守れるからくりとは?

 

 瓦は、雨風から人々を守るだけではなく、それを思いっきり割ることでストレスからも人々を守ってくれる。

 那覇市久茂地にことし3月、瓦割りを体験できる“瓦割り屋さん”、その名も「琉球瓦割道場 割手(わって)」がオープンした。立ち上げたのは現役の瓦補修職人ら。実際に瓦割をしながら、瓦文化の普及や保存に努める姿に迫った。

最高記録は20枚

 割手のこだわりは「琉球赤瓦」を使っていることだ。赤くて固いのが特徴で、「琉球瓦」「島瓦」とも呼ばれる。沖縄の青い空によく映え、時にシーサーの乗っかった赤瓦は、沖縄を象徴としてもよく目にする景観だ。

 店内は「和」のイメージがふんだんに配置されている。

 瓦を割る“ステージ部分”はしっかりと畳だ。和彫りを連想させる猛々しい掛け軸を背景に、気分は空手ヒーローだ。

 琉球赤瓦の補修職人であり、割手を運営する西島恵歴さんによると、顧客ターゲット層は当初、インバウンドだったという。しかし、新型コロナの影響で現在は臨時休業中。出張瓦割りを主に展開している。

 これまでの最高記録は男性で20枚、女性で9枚だ。基本料金は5枚で2980円。そこから、腕自慢たちは追加料金を払って瓦の枚数を足していく。

とにかくやってみよう!

 せっかくなので瓦割りを体験させてもらうことに。

 手には軍手と、さらにボクシンググローブをはめるため、拳の保護はばっちりだ。

 空手着もしくははっぴからコスチュームを選べる。

 始めての瓦割り体験なので、自分の実力が何枚程度なのか全く分からない。

 西島さん「5枚ぐらいなら大丈夫ですよ」

 でも、これで5枚割れなかったらカッコ悪すぎるのではないか、9枚割った女性もいるのに、などと余計なことを考えてしまう。なので、絶対に5枚割りたい。

 流れを西島さんに教えてもらう。

①まず、奥ののれんをくぐって登場。拍手で迎え入れられる。

②位置について

③始まりの合図は銅鑼の音が

④正拳突きではなくて、手の側部を使って振り下ろすイメージ。腕力だけではなく、しっかり膝や腰を落として体重を乗せるのがコツだ。

 それでは、開始。

 …気持ち良い。とてもとても気持ちが良い。瓦を割れたという達成感、キレのある音と共に今までここにあった固形物がバラバラになっている爽快感。初めての感覚が自分の中に生まれた。破壊とは創造であり、創造とは破壊だ。

 そしてしっかり後片付けも。

 このユニークな瓦割り屋さんは、SNSなどでも多くの人に紹介され、着実に知名度を上げていった。

なぜ瓦割り屋を?

 西島さんが参加していた異業種交流会での出会いがきっかけだった。

 自らが代表を務める瓦補修業の名刺を、ある男性に手渡した時だ。「瓦屋さん探してたんですよ!」

 泡盛のサブスクサービス「AWAPASS」の提供などを行うOKTコミュニケーションズの桶田幸志社長だ。「瓦割りの体験サービスがしたい。浅草でめっちゃ流行ってるんだよ」

 実際に足を運んでみた。浅草の外れの方にあるそのお店から実際に聞こえてきたのは、外国人観光客の大声援だ。もう、大盛り上がり。声援が人々を呼び、人だかりができ、新たなるチャレンジャーが登場する。大繁盛だった。

 「うわあ、すごいな、と思いました。そこの瓦屋さんと別の企業がタッグを組む形で経営していました」

 西島さんの背中は一気に押された。

瓦を割れば割るほど瓦文化が守れる

 東京生まれの西島さんは「赤瓦のある沖縄の風景」が大好きだ。「赤瓦は、日本国内では沖縄にしかないですから」と、独自の気候風土が生み出した伝統建築にはまっていった。

 「だからってそんな素晴らしい赤瓦を割ってどうするんだって声もありますけどね」

 では、なぜ敢えて西島さんは瓦を誰かに割ってもらおうとするのか。それは、赤瓦の需要低迷を改善させたいという瓦愛からだった。

 「沖縄の赤瓦は比較的に高価で、なおかつ約50年の耐久性があるので、新しい瓦が生産されにくい状況にあります」

 産業としての瓦製産業が頭打ちになってしまうのではとの危機感があった。

 「なにか瓦で面白いことできないか、リピーターを増やすにはどうすればいいんだろうと考えた時に『割ったら早いんじゃないか』って(笑)。割った瞬間からリピーターというか」

 関係者の中には、瓦を“積極的に割る”という行為に反対する人がいる一方、瓦文化の普及という観点から応援してくれる人もおり、反応は様々だ。

 「沖縄は空手の発祥地で、観光地でもあります。沖縄独自の瓦がある。沖縄で瓦割りをするサービスを展開すると良いのではと思いました」

 そして、瓦が割れれば割れるほど、結果的に沖縄の赤瓦の生産体制が安定するという。それは、沖縄県内で再生工場の稼働を実現させる、ということだ。

 西島さんによると、現在は、沖縄県内の赤瓦が廃棄される絶対数が少ないため、リサイクル工場を県内に造れないという。そのため、業者が県外に持って行って処分しているのが現状だ。

 一方で、もしも瓦割りに親しんでもらって、結果として一旦の廃棄瓦が増えると、県内で再生工場を作っても採算が合うようになり、瓦の原料資源を保全したまま赤瓦の生産数を伸ばすことができる。

 「面白いですよ。瓦割りをやると、廃棄量が増えて県内でのリサイクルが実現できるようになります」

 瓦を破壊して、新しい瓦文化を創造する。人々の生活の中で「琉球瓦」を意識できる場面を増やすことができる。割手は観光体験施設としての顔だけではなく、赤瓦の未来を見据えて活動している。

集え力自慢!

 とはいえ、コロナ禍が直撃してしまった世界だ。開店当初こそ注目を集めたが、そうそうに新型コロナが拡大し、観光客数は激減した。

 「もっとたくさんお客さんが来たら、単価を下げることができます。本当はお手軽価格でやっていきたい。ぜひぜひ地元の人にも瓦割りに挑戦してもらいたいです」と話す。

 観光客以外にも楽しんでもらう方法を模索しようと、沖縄一の繁華街、那覇市松山のキャバクラなどとのコラボを進めている最中だ。

 「同伴出勤のコースに入れてもらおうと思っています。ぜひ女性の前で瓦をたくさん割って、カッコいいところを見せてほしいです」

 力自慢もそうでない人も「割手」に集って、図らずも沖縄の瓦文化の発展にぜひとも寄与してほしい。

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長濱 良起

長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。2019年に県系移民などをつなぐウェブメディア「One Okinawa」創設。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(東洋企画)

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