子どもたちの心に創造力の種を蒔く 沖縄発の演劇プログラムを試演

 
『ぼくはみんながだいすき』

 演劇ユニット「多々ら」による演目『ぼくはみんながだいすき』は、友達と遊びたいけれどつい意地悪なことをしてしまう主人公のエディが、友達や自分の気持ちにどう向き合っていくかを考えさせる作品。ナビゲート役の不思議なお姉さんとともにエディの心の中に入って、自分や他者の心との付き合い方を、観客の子どもたちにも問いかけながらストーリーが進む。明確な答えを設定せず「みんなで一緒に考える」ことを重視した作風は、会場の子どもたちにも受け入れられていた。

『ぼくらのおうち』

 「劇艶おとな団」の演目『ぼくらのおうち』は、南の海に浮かぶ動物たちの楽園“てーげー島”を舞台に、大嵐で飛ばされてしまったのんびり屋とせっかちの2匹のケナガネズミが自分達の家を探す冒険物語だ。絵本のような世界を演出する背景パネルも駆使しながら、オリジナルの楽曲に生演奏のチェロを乗せ、演者の2人が踊って歌いながら場面が展開していく。ステージは目にも耳にもキャッチーな要素で彩られ、子どもたちは演劇の物語の世界に没入していた。

年明けからの“本格稼働”目指す

 文化の箱で企画や運営を担当する島袋景子さんは試演会を終え、「観劇した子どもたちの反応も良くて、プロジェクトの意義とやりがいを見出せました」と手応えを語る。同伴した保護者たちからも「ありがとう」という声が届いたという。会場の空間や目の前で動く役者など、五感で演劇を体験することは「子どもたちにとって、創造力に直に触れることができる良いきっかけになります」と強調する。

 現在は試演会での観客のアンケートを受けて、パフォーマンスしたそれぞれの劇団が課題点などを洗い出してさらに演目をブラッシュアップしているという。今後は年内でさらにモニター上演を経て、年明けから本格的に稼働して依頼を受注していく。幼稚園や保育園、小学校、学童まで、子どもたちが居る場所に出張公演に出向く予定だ。
 島袋さんは「たくさんの子どもたちに受け入れてもらえるように作品を仕上げて、さまざまな現場で上演できるような体制を構築していきたいです」と話した。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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