混迷のウクライナ情勢 原油高騰が生活に及ぼす波紋は

 

 ロシアによるウクライナ侵攻に伴って、原油や小麦、希少資源などの価格高騰が止まらない。特に「車社会」の沖縄では、原油価格の上昇はガソリン価格が上がることにつながるため、日常生活レベルでその影響の大きさを感じている人も少なくないはずだ。県内のガソリンスタンドでは、1ℓあたり180円を超えている所も見かけるようになってきた。
 この煽りを受けるのはもちろん自家用車だけではない。物流を担う輸送業や、日々の食を支える漁業も厳しい状況に晒されている。

燃料に月100万円超の余分な出費も…

 沖縄県トラック協会の宮平仁勝専務は「だいぶ厳しい状況」だと話す。トラックの保有台数が30台規模の事業者で、燃料高騰によって例年よりも月に100万円以上余分な支出を強いられているケースもあるという。しかも、こうした例は「まだ額としては低い方という話もあります」。

 さらに、トラック業界の慢性的な問題だったドライバー不足が今回の状況下でさらに重くのしかかっている。

 日常生活を送る上で物流は欠かせず、コロナ禍といえど一定規模で動き続けている。「スーパーなどに普通に並んでいる食品や商品はトラックの運転手が24時間運び続けているもので、当たり前の話ですが皆さんの生活に非常に密着した話なんです」

 以前から長時間労働や賃金の低さが指摘されており、それゆえドライバー志望の人が少ない中で業界として賃上げに取り組んでいる矢先の燃料費高騰に、宮平さんはため息をつく。

「会員の事業者たちも一生懸命やっていますが、今回のような事態に突入してしまったことでそれぞれの企業が存続に手一杯で、労働環境の改善をする余裕がないですね」

 また、急騰抑制策で政府が石油元売会社に支払う補助金額の上限を25円まで拡充する方針を示していることについては「大変助かる」と評価している。

 ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」を巡る議論や法律改正は対応に時間がかかってしまうことから、「末端の給油所まで早めに効果が行き渡るよう、しっかりと対応をしてもらいたいですね」と要望した。

コロナと原油価格上昇のダブルパンチ

「コロナ禍もあってそもそも魚価単価が上がっていかない中で、原油高が続いているのはかなり厳しい状況です」

 沖縄県漁業共同組合連合会購買課の名嘉真彦人課長はこう説明する。漁船の燃料は基本的に重油。原油価格の上昇に伴って、1ℓあたりの組合価格が税込100円を超えており、通常よりも20~30円高い水準だという。

 急騰抑制策で政府が石油元売会社に支払う補助金額の上限を25円まで拡充する方針を示していることから、「値段が急激に動くことはなくて、少しの間は落ち着く」と見ているが、この“落ち着き”がいつまで続くのかは不明瞭だ。

 加えて、ウクライナ侵攻の前段でコロナの影響も大きかった。「魚価単価が上がらないのは、居酒屋に足を運ぶ人たちが激減したという状況も大きいですね。家庭での魚の消費量ではやはり限界があって、飲食で経済を回さないと漁師もきついんですよ」

 漁業共済制度など積立方式の国の支援策もあるが、組合員の中には既に積立分を使い果たしてしまって一から積立し直す人もいるという。

 この状況がしばらく続けば「燃料との兼ね合いや、これからの本マグロの時期に備えて特にマグロ漁船は出漁を見合わせるケースも出てくると思います」と名嘉真さん。この影響で、今後県内のマグロの流通量が一時的に減る可能性もあるという。「世界情勢もコロナも、どんな形になるのか見定めながらやっていくしかないでしょうね」

 既に日常生活レベルの多くの面で影響が出ている現状を見ても、予断を許さない状況が続くウクライナ情勢は“遠い国の出来事”では全くない。個人で出来ることは限られるが、日々の生活の中でさまざまな情報を得て考え続けていくしかないだろう。


真栄城 潤一

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1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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