「僻地の悲願」人口150人集落にコンビニ自販機が登場した結果

 

 沖縄本島最北端である国頭村の東海岸・安田(あだ)地区の共同売店「安田協同店」にファミリーマートのお菓子やレトルト食品などが購入できる自動販売機が登場した。人口150人程の小さな集落には食堂やレストランがなく、利用した男性は「昼食難民になることも多かったので助かっています」と喜んでいる。

「僻地の悲願」

 安田協同店には、日用品や食品類を扱うスペースの他、テーブルやイスの置かれた憩いの場がある。ちょうどクリスマスイブの日、ファミリーマート商品の自動販売機は2台がここに設置された。ファミリーマート店舗でもよく目にする「チーズインハンバーグ」や「ごろっと肉じゃが」、「さば竜田の甘酢あんかけ」などのおかず類も購入でき、すぐに電子レンジで温めることが可能だ。

 熱々の“ご飯のおともラインナップ”が増えたことで、協同店はもともと扱っていたレンジ調理のごはんパックの在庫を増やして待ち構えている。

 安田地区は人口規模に比較すると多くの観光客が訪れる。本島北部の東海岸は、人口の集中する中南部からだと車で2~3時間の道のりで、遠出して自然を満喫したい人にとってはうってつけの場所であることや、自然保護やエコツーリズムに熱心で「ヤンバルクイナの郷」を宣言していることがその理由に挙げられるだろう。

沖縄本島北部。赤く囲まれた場所が国頭村安田地区

 自動販売機効果もあってか、年末の客足は絶えなかった。安田地区に住む小林和彦さんが「都会のコンビニぐらい人が来ているね。史上最多の売上なんじゃないの?」と冗談交じりに話す相手は、協同店の平秀子さんだ。「僻地の悲願です。工事関係者の方に『どこかご飯食べられる場所ないですか』と聞かれても案内できる所がないですからね。それがネックでした」(平さん)

企業版ふるさと納税の活用で実現

 沖縄県を中心として、山間部や離島部の集落には「共同売店」が点在する。集落の住民が共同で出資・運営するもので、1970年代には約200店あったというが、今では約50店ほどに減少している。

 今回の自動販売機設置は、沖縄民間ピーシーアール検査機構による「企業版ふるさと納税」で実現した。企業版ふるさと納税とは、企業が自治体に寄付をすると税負担が軽減される制度のことで、2016年度に開始された。これまでの制度では寄付額の3割に相当する額の税負担が軽減されていたが、企業版ふるさと納税でさらに3割分が追加され、合計6割の生負担が控除される。

 安田地区での企業版ふるさと納税の活用効果に、各地の行政職員からの注目も高まる。年末の休みを利用して、ファミリーマート自動販売機を訪れていた浦添市職員の宮城良典さんは「実際の事例として市役所職員としては見に行く価値があります」と話し、店内へと入っていった。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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