今年は中止の全島エイサー、園田青年会の去年の祭り当日の裏側

 
演舞を披露する園田青年会(写真提供:園田青年会、以下同じ)

 「沖縄全島エイサーまつり」とは、沖縄市で開かれる沖縄最大のエイサーのイベントだ。コザのゲート通りで若者たちが太鼓のリズムにあわせて勇壮に演舞するさまはまさにこの祭りの見どころ。ぴたりと息のあった姿は、長時間の練習の積み重ねの賜物だ。今年は残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大によって中止となってしまったが、昨年の祭り当日の様子を再現してみたい。

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 登場するのは、全島エイサーコンクールだった時代において、21年間で最多7回の優勝を記録した、歴史ある園田青年会。県内外、海外で活躍し、全島エイサーでは何度も大トリを務め、祭りの最後を締めくくってきた。そんな園田青年会は全島エイサーまつりの当日、どんな1日を過ごしているのか。話を聞かせてくれたのは園田青年会の小浜守生副会長。全島エイサーまつり以外でエイサーを見れるチャンスも教えてくれた。

朝 全島エイサーを見れない高齢者のために演舞

 当日の午前中は、全島エイサーまつりを生で見られない高齢者のために北中城村島袋にある特別養護老人ホーム「愛の村」と沖縄市与儀の「沖縄一条園」で慰問演舞を行っている。園田青年会が約40年間続けている活動で、2つの施設に園田区民の入居者が多かったのがはじまり。演舞を披露して元気になってもらおうと続けている。

 施設利用者と職員らは園田青年会の力強いエイサーを観賞し、施設内で繰り広げられる迫力ある太鼓の音や踊りに、時より涙ぐんだ表情で拍手を送ったり、曲に合わせて車いすの上で手踊りを始めるお年寄りもいる。最後はやっぱり、お年寄りも青年も一体となってのカチャーシーだ。

一緒にカチャーシー

 「全島エイサーまつりやお盆の道ジュネーを見られないお年寄りの方々に、生のエイサーを見てもらい元気になってもらいたいと続けている。エイサーが大好きなおじぃおばぁから応援をもらえることが頑張りにつながっている」と小浜守生副会長。

 おじぃおばぁたちは「元気をもらった」とにっこり笑い、喜ぶ。自由に外に出かけることができない施設のお年寄りにとって、生のエイサーは元気を生み出し、生きがいにもなっている。

演舞が終わって挨拶をする様子

「いなり寿し家」の前で感謝の演舞

 慰問演舞後は、園田青年会がお世話になっている「いなり寿し家」の前で演舞。

 「いなり寿し家のいなりとチキンは、イベントや演舞がある度に園田公民館には必ずと言っていいほど並んでいる。これからもパワーをもらって頑張っていくと感謝を込めて演舞をしている」

 「エイサーファンでも気軽に見ることができる」といい、演舞前は、どこからか情報を聞きつけ、多くのファンが集まってくる。中には、本土の観光客で「全島の前にいなり前で演舞する情報あり」とSNSを投稿し、見物にくるファンもいるほど。

 さらに、嬉しい情報も。いなり寿し家は、うるま市平敷屋にある丸一食品が発祥ということもあり、全島エイサー当日は、園田青年会の演舞前後に平敷屋青年会も同じ場所で演舞を行っている。そのため毎年、いなり寿し家がある郵便局通りは、「園田青年会と平敷屋青年会両方のエイサーが近くで見れる」と最高の見物スポットになっている。

園田公民館で出発演舞、道ジュネーで地域に挨拶

 公民館に戻ってくると、全島まつりの会場への出発演舞だ。夏シーズンを迎え、毎晩学業や仕事終わりに集まって練習に励んできた公民館へ、感謝と挨拶を込めて踊る。その後、道ジュネーへと出発する。

公民館で出発演舞

 「全島エイサーコンクールだった時代、沖縄市コザ運動公園まで道ジュネーをしていた。道ジュネーで通るときの演舞を見て、”今年は足があがっているから優勝できるはずよ”と声をもらったり、園田区民が出てきてエールをもらったりしていた。その名残で今も道ジュネーを続けている」と小浜副会長。

道ジュネーをしながら会場へ向かう

 現在は、全島エイサーまつりで「全島会場近くでは演舞禁止」のルールがあるため、できる限りの範囲内で園田地域の通りをエイサーを踊りながら道ジュネーをして、地域の方々へ出発の挨拶を行っている。

全島本番、一致団結、全力で

 本番の約3時間前。道ジュネーを終えて、歩いて会場入り。この日の園田青年会の弁当は毎年決まって「1丁目ストアーの弁当」。これを食べてくんち(根気)をつける。現地集合のメンバーも多く、仕事を抜けて会場に向かっているメンバーらに確認の連絡回しを行ったり、各々衣装を着替えたり、着付け直し。出演1時間前には全体で演舞や隊形の確認をする。

 いざ本番。会員全員の想いは「会場の人に、先輩達がつくりあげてきた園田青年会の名を汚さぬように一致団結、全力で踊る」こと。アップテンポの速い曲を切れ目なく踊る演舞は圧巻で、男はダイナミックで勇ましく、女性は優雅な手踊りで、見る人を引き寄せていく。

演舞を披露する園田青年会

道ジュネーから公民館へ、シーズン最後の演舞

 大トリを務める遅い年だと、大体21時半頃の時間帯。本番出演が終わると再び公民館まで道ジュネー。園田地域の方々に祭りから戻ってきたことをエイサーを踊りながら報告していく。全島まつりの本番を終えてもまだ園田青年会のエイサーは続く。

 まつりの疲れを感じさせない迫力ある演舞で練り歩き、青年らは汗びっしょり。園田公民館へ帰ってくると、驚くことに公民館に座るところがないほど人で溢れている。下は赤ちゃんから、上は80から90歳のお年寄りまで、園田区民や園田青年会の追っかけファンなど約100名弱が公民館で待っている。まつりの会場で打ち上げられる最後の花火を見ずに公民館へ移動し場所取りをしている人もいるほどだという。

公民館でシーズン最後の演舞

 全島エイサーまつりの1日は本当に長い。いよいよ園田公民館でシーズン最終の演舞。今年の思いと多くの方への感謝を込めて踊り、園田地域の住民とエイサーファンの観客と共にシーズンを締める。

 最後に、小浜副会長は「毎年、全島エイサーまつりの当日に行っている、いなり寿し家、公民館での演舞、道ジュネーはエイサーファンでも気軽に見ることができる。また、園田青年会では、道ジュネーの雰囲気を味わってもらおうと動画を制作し、青年会のFacebookなどSNSで発信している。動画でもエイサーを楽しんでほしい」とエイサーファンに向けて呼び掛けた。

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 1956年に始まった全島エイサーの歴史で、今年初めて中止となった。新型コロナウイルスの感染のリスクを考えれば、止むを得ない判断だった。今年の祭りに向けて去年から練習を重ねてきた各地域のメンバーたちにとっては残念なことだろう。しかし、全島エイサーはまた来年もある。その時にまた彼らの勇姿を目にしたいものだ。

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