4ヶ月ぶりの乾杯は「最高」 緊急事態宣言解除後、那覇の街は

 
たくさんの人で賑わうアーケード街の一角

「やっと外で飲めた~」「お店での生ビールは格別!乾杯ー!!」

 10月2日の夕暮れ時、店先のテラス席で乾杯して満面の笑みでビールやハイボールを飲み干す人たちの楽しそうな声があちこちから響いている。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、4ヶ月以上に及んだ沖縄県の緊急事態宣言が10月1日に解除された。全面的な制限解除ではなく、未だ時短営業でアルコール提供の時間帯に縛りはあるが、那覇市内の飲食店ではこれまで溜まったフラストレーションを発散するようにお酒を楽しむ人たちの姿を多く見かけた。解除後間も無くの土曜とあってか、国際通りや平和通りなどの繁華街はこれまでよりも明らかに人手が増えている。観光客もいたが、地元客の方が多いような印象だった。
 ただ、アクリル板を設置していない店や、立ち飲みで明らかに“密”になっている店など、「第6波」の懸念が頭をよぎるような光景も見かけた。

店で飲める嬉しさを噛み締める

 第一牧志公設市場周辺、“せんべろ”を楽しめる立ち飲み屋などもひしめく一角で談笑しつつビールを飲んでいた20代女性の仲良し3人組は、約半年ぶりに顔を合わせたという。そのうちの1人の女性は「こんなに外で飲めない期間が続いたことは今までなかったので、何年も会っていないような感覚。また一緒に乾杯できて本当に嬉しいです」と目を細めた。別の女性は「みんなで生ビールで乾杯できる日を待ってました。でもまだ時短だから早く飲まないと(笑)」と言いながら杯を進めていた。

 ほろ酔いでアクリル板越しに乾杯していた30代の男性2人組。一方の男性が「今日昼から飲むために休みを合わせたんですよ」と親指を立てる。友人の男性が「最高ですね」と深く頷き、「やっぱり外でご飯食べながら誰かとちゃんと対面で飲むのは、とても重要なんだと今実感しています。楽しいし、リフレッシュになる」と続けた。

 多くの人でほぼ満員の店がある一方で、通りを1本隔てるとほとんど空席の店が並ぶ場所もあった。そのうちの10席もないほどの小さな居酒屋の男性店主は「今日は2~3人常連が来てくれて、少しだけ飲んで帰っていきました。それからはもう全然来ないので、もう閉めようかと思っていた所です」と苦笑い。「20代とか30代の若い人たちが客層のお店は、かなり人が来てますね。うちのお客さんはまだ様子見してるのかもしれないです」と付け加えた。

空席が目立つ店もちらほら

感染対策はできているのか?

 10月末までを要請期間とする沖縄県の対処方針では「飲食店への要請の中に同一グループ・同一テーブル原則4人以内」「アクリル板の設置」といった要請項目があるが、アクリル板が全く見当たらない店舗や、同一テーブルを6人以上で囲んでいる人たちもいた。また、立ち飲み屋が並ぶ場所では、隣り合う店の客が10人以上入り乱れて大声で楽しげに飲み食いしている様子も見かけた。水を差すようなことを言いたくはないが、この状況が続けば、また感染者数が増えるのではないかという懸念を抱かざるを得ない光景だった。

 一方で、現状を冷静に見守る人もいる。浮島通りで買い物をしていた40代男性は「ワクチンの摂取率が7割超えたらお店で飲んでいいかなって思ってます」と話す。「飲みたい気持ちもあるし、行きたいお店もある。経済を回さないといけないとも考えてますが、個人的にはまだ安心できなくて…」と心境を語った。
 沖縄県の発表によると、9月29日現在の全年代ワクチン接種率は1回目終了が60.73%、2回目終了は48.73%にとどまっている。

国際通りの人手も増えていた

 繁華街を歩いていると、緊急事態宣言の解除に伴って街の空気が良くも悪くも“緩んだ”ように感じた。
 大手を振ってお店で酒を飲みながら美味しいものを食べられるようになったとは言え、感染者数がゼロになったわけではない。行政の対策や方針に振り回される面もあるが、迎える側の店も、そして楽しむ側の客も、向かい合って乾杯できる今のような状況を持続していくために、現状出来る限りの感染対策をそれぞれのレベルで考え実践していくことが重要だろう。第6波で再び飲食店の灯りが消えてしまわないように。


真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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