不妊治療に向き合う「情報共有の場が必要」 当事者夫婦に聞く

 

 子どもを望む男女が、避妊をしないで一定期間性交を続けているにもかかわらず、妊娠できない「不妊」。一般的にこの「一定期間」は「1年」とされており、この期間不妊が続く場合には検査をして不妊治療を受ける対象になる。インターネットを検索してみると、人工授精や体外受精など様々な治療法の説明やデータ、不妊外来の案内などの情報はあるが、治療を受けた当事者の生の声を目にすることはあまり多くない。
 県内在住の高良菜菜子さん・法和さん夫妻は2013年から約4年間に渡って不妊治療を受けた。特に女性側にとって心身ともに負担が大きい不妊治療について、通院したきっかけや治療の段階が変わる際の思い、自分たちの現状に夫婦としてどのように向き合ってきたのか話を聞いた。

何も分からないところから

 —不妊治療を受けた経験を振り返った時に最も感じることはなんですか。

 菜菜子さん「不妊治療に関して、情報を共有する場がなさすぎるということがあります。もちろん、セックスも含めてとてもプライベートな部分もあるので、『人前じゃ話しちゃダメかな』という思い込みもある。どの部分まで話せるかというのは人それぞれで個別に違いがありますが、私たちの感覚だと勝手にデリケートに考えすぎて、伝わるべきことが伝わっていないと感じますね」

 法和さん「情報を欲しい側も伝える側も互いに牽制し合ってるような雰囲気もあって、本当に欲しい情報がいくら探しても出てこないというか。特に男性だと自分の体ではできないことなので、何をどこからどうすればいいのかも全然分からなかった」

 —治療を受けるまでの経緯は。

 菜菜子さん「30歳で結婚してしばらく経って、1年くらいいわゆる『妊活』をしても一向に妊娠しなかったんです。あれ?と思って基礎体温などの記録をつけながら続けてもできなかった。でも正直、8年間記者職の激務で体を酷使していたことが心当たりとしてありました。そこで『とりあえず軽い検査で』みたいな感じで町の産婦人科(不妊外来)に行ったんです」

 法和さん「その時妻が『一緒に行く?』という感じだったので、同じく軽い検査のつもりでついて行きました。そうするとすぐ入り口段階で精子、卵管の検査が始まって、はいじゃあ次はこれね、という感じでそのまま検査で何度も通院することになり、運動精子を確認するフーナーテスト(性交後試験)も受けました。検査と治療の境目が曖昧な感覚で、気付いたらもう治療に突入しているような」

 —いつの間にか治療が始まっていた。

 菜菜子さん「まだ心の準備ができていないうちに放り込まれたというか、そんな感じでしたね。そこから毎日体温測定をして記録したり、通院のために会社を休んだりする生活が始まりました。妊娠のためのチャンスが月1回のペースなので、それを逃すまいという気持ちが強くなりました」

 法和さん「こうした治療の初期段階で、性行為自体が今までとは違って“作業”のようなことに思えてきて、楽しいものではなくなったというのが正直なところでした。例えば付き合いで行った飲み会の後とかに酔っぱらった状態で『今日なんだけど』と言われてもなかなかできない時もある」

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