不妊治療に向き合う「情報共有の場が必要」 当事者夫婦に聞く

 

理解はパートナーに、共感は同性に

 —しばしの中断を経て、2016年頃に治療を再開。その際はどんな風に臨んだんでしょうか。

 菜菜子さん「中断前からもずっと抱えてた気持ちでしたけれど、諦めるのも気力が要る。それに、子どもができなかったらいつまでもゴールがこないということになる。当時心療内科にも行っていたのですが、そこで『髙良さんは産みたいの?育てたいの?』と問われたことや、夫の話も聞いて、養子についてのリサーチもしたんです。でも、目の前にある方法として体外受精という選択肢もあった」

 法和さん「妊娠の確率は高いということは聞いてましたが、正直言うと体外受精の手法に違和感を覚えていて、すぐには乗り気にはなれなかった。でも人工授精だと妊娠の確率がひと桁なのに対して、体外受精だと40~80%。医師も『体外受精がいい』と言っていたので、それだと『ちょっと話が変わってくるな』と思って、やってみてもいいのかなと」

 菜菜子さん「2人できちんと話し合って『やれることはやった』という1つの“区切り”として、1度だけ体外受精を試してみようと決断しました。自分自身で注射を体に打ち込んだりしながら、2017年に無事妊娠しました」

 —このインタビューもそうですが、お2人は不妊治療の経験を踏まえて、周囲からの相談を受けたりする場を設けるなど情報共有を積極的に行っています。そうした立場から、これから治療に取り組む人たちや、あるいは現在進行形で取り組んでいる人たちについて改めてどういうことを伝えたいですか。

 菜菜子さん「治療の期間は心身ともにかなりの負担があります。夫婦の話で言えば、一番分かってほしいパートナーが分かってくれないという苦しみとか苛立ちもすごく感じます。
 でも相手は身体のつくりが違う男性だし、女性側が共感を求めると食い違うと思うんです。よくお奨めするのは『パートナーには理解してもらい、共感はわかってくれる同性に求める』ということです。そこを踏まえて、自分の気持ちを吐き出せる相手をきちんと探せることは大切だと思います。
 最初にも言いましたが、不妊のことは人に言えない雰囲気もあって、まだまだ悩みが閉じ込められているような現状です。行政の相談窓口とかも、情報は色々とありますが基本的には事務的なことを教えてくれるだけで、これから何が待ち受けているかは教えてくれません。だから、女性側には共感してくれる人や受け止めてくれる場所が絶対に必要です。加えて、メンタルのケアもすごく大事。ちょっと上の世代の親類や知人など、悪気はないけれど無責任にプレッシャーがかかるようなことを言ってくることもあるので、そういったことへの耐性や対応も想定してた方がいいかもしれません。
 私はTwitterで同じような状況の人たちとフォローし合って、情報交換の場として利用していました。きちんとした確かな情報を持っている人たちとつながれば、かなり助けになります。子どもが生まれたらそのまま育児の話にもつながっていくので、便利です」

 法和さん「不妊治療の過程はかなり“いばらの道”だと思います。おそらく大概の人たちが仲が悪くなると思う。ただ、もしもその中で希望を見出すとすれば、ちゃんと向き合って乗り越えた夫婦はとても仲良くなって、強くなることでしょうか。赤ちゃん、子育てについて考える時間が、通常の妊娠・出産に比べると圧倒的に違うので、男性側の育児に対する認識も大きく変わると思います」

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