県立病院で一般診療縮小 「医療崩壊」に現実味

 

「当院は、新型コロナウィルス感染症と救急医療の診療に特化するため、本日から当面の間、一般診療を縮小します」

 沖縄県立南部医療センター・こども医療センターが8月10日付で予定入院の中止を発表した。入院を要するコロナ患者と救命救急センターを受診する重症患者を優先するため、11日から小児・成人ともに予定入院を当面中止する。県内感染者数が激増の一途をたどる中で一般診療への影響がより深刻化しており、「医療崩壊」という言葉も脳裏をよぎる。

コロナ・救急対応を優先

 同院では8月に入り、大流行の「第5波」に入ってからも感染症診療を行う「重点医療機関」として、外来受診者数や入院患者数の制限、救命救急センターでも重症度の高い急患を優先するなどの対応指針を示した上で「各人が自分自身とご家族、友人知人の命と医療を守るための最善の行動をとってください」と呼び掛けていた。
 その後の感染者急増を受け、一般診療を更に縮小する判断に踏み切った。発表された書面では「救える命を確実に救うため、病院をあげて全職員が立ち向かっています。どうかご理解とご協力賜りますようお願い申し上げます」としている。

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター

 県立中部病院もコロナ感染対応のため、10~13日、さらに16~20日までの期間は一般外来を停止すると発表しており、逼迫した状況が続く県内の医療現場ではこれまで以上に危機感が募っている。

「今までにない緊張感」

 本島中南部の医療機関に勤める医療従事者の女性は「第5波に突入してからは、今までにないくらいピリピリしています」と緊張感漂う現場の様子を語る。
 8月に入り、玉城デニー県知事は「ロックダウン相当のレベル」と強調して行動抑制を呼びかけた。その一方で、長らく続く緊急事態宣言下ではもはや何が「緊急」なのか分からず、モノレールの乗客や出退勤の車の数にも特に変化はない。医療現場を離れれば“通常通り”の光景だ。だが、要請ベースの対策は既に限界を超えている。
 先の医療従事者の女性は出口の見えない状況に「いつまで頑張ればいいのか…」と言葉少なに語った。

 沖縄県によると、8月11日の県内の新規感染者数は過去2番目の638人で、累計で3万人を超えた。10日の発表では自宅療養者の数が2000人を超えている。

 長期化する緊急事態宣言の中で「もう我慢しても仕方ない」という雰囲気が漂いつつあり、夜間でも開店している飲食店や、運転代行が稼働している様子を以前よりも見かけるようになった。しかしデルタ株が猛威を振るい若年層への感染が急拡大している現状、今や沖縄県内ではどこに行っても感染リスクは非常に高く、感染者数は今後もさらに過去最高を更新していく可能性が高い。
 飲食店や友人知人宅など、“自己責任”で飲みに行ける状況とはいえ、県内の医療現場が今現在限界を超えつつあるということに十分配慮して行動すべきだ。


真栄城 潤一

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1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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