不妊治療に向き合う「情報共有の場が必要」 当事者夫婦に聞く
- 2020/11/27
- 新型コロナ・医療
「もう頑張り方も分からない」
—その時点での菜菜子さんの気持ちはどういうものでしたか。
菜菜子さん「自分の性格は白黒はっきり付けたいタイプで、『努力で何とかできる』と思いながら“頑張るモード”に入ってたんですね。でも記録取って通院して、という生活を8ヵ月くらい続けたのですが、全然結果がでなくて。仕事も休んで、こんなに時間も労力も割いてるのに、と思うとそれに対する“ペイ”が全くなくて落胆が大きかったです。もっと頑張りたいけれど、もう頑張り方もわからないと思い始めてました」
—そこで、次の段階として人工授精という選択肢を選ぶことにしたわけですね。
法和さん「不妊治療という括りで見た時、人工受精で経済的な部分も含めて段階が1段階変わります。人口受精は1回で大体1万5千円くらいから」
菜菜子さん「手法を変えて、妊娠する可能性を高くするために排卵誘発剤も使用していたので、ホルモンバランスが崩れて精神的にまいってました。加えて、通院していたのが町の産婦人科だったので、私以外にもちろん妊婦さんもいる。不妊治療の処置をしている時、カーテンの仕切り越しに隣の10代の妊婦の子に対してお医者さんが『タバコは吸うな』って注意してる会話が聞こえたことがあるんです。『お願いだから大事にして』という何とも言えない気持ちで、かなり辛い思いをした。
2回ほど人工授精を試みたんですが、やはり結果は出なくて。検査の精度も上がるということで、八重瀬にある不妊治療専門のクリニックに行くことにしたんです」
—専門医ということで、治療の環境や通院への心持ちなどに変化はありましたか。
菜菜子さん「それはやっぱりありました。まず治療を受ける人がリラックスできるような環境になっていること。ちょっとしたホテルのような洗練された雰囲気だったり。あと、やっぱり専門医への信頼という点もありますね。担当されるお医者さんも、基本的に夫婦間の意見を尊重して、処置方法について決して押し付けはしない」
法和さん「ただ、待ち時間がものすごくあった。確か初診まで3ヵ月くらい待ったと思います。治療についても、予約をして行っても2時間くらい待つのも普通で。でも待機場所の環境があるので、その間にもPCで仕事したりはできましたけど」
菜菜子さん「体調を数値化しながら食事の調整もして、通院のために仕事を休む頻度も上がってきていました。そのタイミングで職場の異動もあり、環境が変わったとはいえ通院検査と仕事の両方で大きくストレスを感じていたんです」