沖縄県でコロナ感染急増のわけ デルタ株と市中感染の拡大

 
新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像 国立感染症研究所HPより

 27日、沖縄県での新型コロナウイルスの新規感染者の数が過去最高の354人となった。四連休明けでPCR検査を受けた人の数も多く、感染者の数が多く出ることはあらかじめ予想されていたが、それにしても緊急事態宣言が出ているにも関わらず、1週間前の20日の新規感染者数154人の2.29倍という急増ぶりである。この日、玉城デニー知事による記者会見はなかったが、知事には県民に強いメッセージを打ち出して欲しかった。

デルタ株が全体の3分の1に

 ここにきて感染が再び急拡大している理由として、二つのことが挙げられる。

 ひとつはデルタ株の急速な拡大である。デルタ株に特徴的な「L452R」変異が沖縄県で最初に確認されたのは、6月24日。那覇市と中部保健所管内のいずれも30代の男性2人の検体からである。

 県のまとめでは、6月の第4週から7月の第2週までは全感染者のなかで、L452R陽性者の占める割合は2、3%程度であったが、7月第3週(7月12日〜18日)に入ると急激に増え始め、第4週(19日〜25日)には全体の3分の1を占めるに至った。今週に入り、その割合はさらに増えているものと推測される。

 デルタ株は、インド国内で猛威を振るった変異株で、その感染力は、従来のウイルスの1.95倍と推定されるという分析結果もある。とりわけ本島中部で感染者が増えており、今後は那覇など南部でも感染が拡大することが懸念されている。

 感染者の急増のもうひとつの理由は、市中感染が広がっていることである。これまで県外からコロナウイルスが持ち込まれるケースが多いとされてきた。しかし、27日の会見で、沖縄県の糸数公医療技監は、県外からの移入例が拡大の要因となった可能性について問われ、「(渡航者との接触よりも)県内の友人、知人と会食し、その相手が感染していたというパターンが多い」との考えを示したという。実際、県による感染経路の調査では、県民同士の飲み会などで感染するケースが増えてきている。

増える若い世代の割合

 年代別では10代から30代にかけての若い年齢層で感染が広がっている。県のデータをもとに、7月27日までの1か月間に、新規に感染した人のうち10代から30代までがどのくらいの割合を占めるか、グラフにまとめてみた。多少の山や谷はありながらも、全体として増加傾向にあることがわかる。

 高齢者のワクチン接種が進んでいるという事情もあるだろうが、一方で、若い世代の間で長く続く緊急事態宣言のもとでの「自粛疲れ」や気の緩みが出ているものと見られる。県は酒類を提供する店への休業要請を継続しており、要請に応じない店を公表するなどの措置を取っているが、若い世代の客がなかば公然とグループで酒を飲む姿が見られる店も少なくない。

 県が要請に応じないとして7月6日に那覇市や沖縄市、名護市などの25店を公表したが、実態として酒類を提供している店はもっと多いという印象だ。県にはこうした実態へのきめ細やかな対応が求められる一方で、県民一人ひとりにもしっかりとした自覚が必要である。

 今月22日から25日までの四連休で県外から多くの観光客が訪れ、県民の移動も増えることで、感染がさらに広がることも懸念されていた。実際には台風6号の接近による影響で、沖縄発着の航空便に欠航が相次ぎ、数万人の観光客が旅行をキャンセルし、多くの県民も自宅にとどまることを余儀なくされた。そのため四連休中の人流は予想されたほどではなかったと思われるが、今後も気を抜くわけにはいかない。長いトンネルの出口が見えるまで、あともう少しの辛抱だ。


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