データ利活用で沖縄観光振興モデル構築へ 県内4機関が連携、方針示す

 

 沖縄県の観光関連産業が新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けている現状を踏まえ、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)、沖縄総合事務局、沖縄県、沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)が9月22日、“ウィズコロナ”を見据えたデータ駆動による観光振興を実現するための「データ利活用型沖縄観光振興モデル」構築を目指す統一メッセージを発表した。この構想の実現に向けて、今月中に国や県内自治体、関係団体・企業、有識者らによる検討委員会を設置し、「沖縄だからこそ実現できる先進的なモデルを実現していく」としている。

情報共有と連携で波及効果狙う

 発表資料では、沖縄県がこれまで観光分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)化に関連して、公共交通機関をITでシームレスに結びつけるシステム「Mobility as a Service(MaaS)」やキャッシュレス、5Gなどの新たな技術を用いた実証実験が実施されてきたが、これらのプロジェクトの成果が横断的に共有されておらず、今後の取り組みへの発展的な活用ができていない現状を指摘。他の取り組みや団体との連携を強化することで、観光振興の面で地域に大きな波及効果をもたらすことに狙いを定める。

 さらに、コロナ禍になったことで県内観光関連事業者のデジタル化の遅れが露呈し、観光客の実態をデータで判断することが難しい現状が改めて浮き彫りになったことも課題として挙げる。観光による経済復活、観光客の満足度の向上、さらに地域事業者の収益増を図るためにも、データに基づく観光振興がより重要になることを強調した。

ニーズ可視化で観光地経営を高度化

 取り組みとしては、観光を軸としたプラットフォームを構築することで、沖縄全体での観光客のニーズと周遊状況、さらに消費実態などを可視化し、誘客や満足度を検討しながらリピーターの獲得につなげていく方向性を検討する。加えて、自治体や観光地域づくり法人(DMO)、観光協会などが各地域の実態把握をデータ化して整備し、観光地経営の高度化も図る。

発表資料より

 また、上記のような手法で集約したデータを各産業の事業者が活用することで、観光を軸にした地域活性化にもつなげて県民へ還元するサイクルを構築することも視野に入れている。

 沖縄では緊急事態宣言が4ヶ月に渡って継続している。その中で、特に観光関係者からは県外からの観光客を対象とした感染経路について調査を実施し、算出したデータに基づいて経済活動を再開していくべきだという要望の声が以前から上がっていた。それを考慮すると、コロナ禍に突入して1年半が経過したタイミングでのこうした動きは、決して素早い対応だとは言えないのが現状だろう。
 現在、全国的に行動制限緩和や「ワクチンパスポート」などについての議論が始まっており、県内では石垣市が独自で運用を開始することを発表した。沖縄の「リーディング産業」である観光業を立て直し「先進的なモデル」を実現するためには、可能な限り迅速かつフレキシブルに計画を具体化していく取り組みが求められている。


真栄城 潤一

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1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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