コザ暴動は「反米暴動」だったのか③ そしてコザで

 
コザ市の街並み 沖縄県公文書館所蔵

 今から51年前の1970年、米国の施政権下にあった沖縄で起きたコザ暴動は、基地の街であったコザの中心部で多くの米軍車両などが焼き討ちされた事件である。背景には、米軍に対する住民の積もり積もった不満があったとされるが、果たしてこの事件は「反米暴動」だったのか。当時、琉球検察の検事として事件の捜査にも関わった高江洲歳満氏の論考の第三回目。第一回目(https://hubokinawa.jp/archives/9686)、および第二回目(https://hubokinawa.jp/archives/9759)も参照。

事件発生

 糸満での事件に対する軍法会議で無罪判決が出てから13日後のことだ。

 1970年12月20日午前2時37分頃からその日午前6時41分までの間にコザ市(現沖縄市在)嘉手納航空隊第2ゲートからコザ十字路を経て南下して北中城村島袋三叉路までの間の道路上で、米軍人、軍属の車両が焼き討ちされた。それは2件の米兵運転の交通事故の後に起きた。

 最初の事故はその日午前1時頃コザ市中の町京都ホテル前の2号4線(現沖縄市県道330号線)道路で米兵運転車両が具志川市(現うるま市)在住で牧港兵站部隊勤務の琉球人大工に接触した事故だった。

 その前日午後2時から美里村(現沖縄市)美里中学校で毒ガス完全撤去の集会が開かれ、終了後参加者が事故現場に隣接する中の町飲食店街に流れ込んだ。午前1時頃、彼等が帰宅するため事故現場道路に出ていた時に事故が起きた。あっという間に200名を超える人が集まった。憲兵の実況検分が終わり、事故車の移動を始めると、「車両を憲兵に渡すな」「糸満事件の二の舞になるぞ」との声が出て、群衆は憲兵、事故車を取り囲んだ。この騒ぎで現場の交通は麻痺した。

 米兵運転の車が午前2時10分ころ、事故現場南約50mの地点を事故現場に向かっていた。その車を見て、「アメリカーが来たぞ」との声がかかると同時に、数人の者が車の進路に立ち、塞いだ。米兵はハンドルを右に切り、人との接触は避けたが、駐車していた車に追突した。これが2番目の事故である。追突した車に石が投げられフロントガラスが割れ、搭乗者が怪我した。10名余の者は車を蹴り、ひっくり返そうと揺すった。

 午前2時30分ころ、第2事故現場にパトカーが到着した。憲兵4人が車から降りて事故車に向かった時、誰かが憲兵に向かって石を投げた。それを合図に5名ぐらいの者がパトカーを横倒しにした。それを見て付近に近づいていた別の憲兵が空に向けて発砲した。音に驚き人が散った。憲兵達は横倒しにされていた車を起こすと、車を残して現場を離れた。憲兵が立ち去った頃、第1、第2の事故場現場を埋めた人は7千名余に膨れ上がっていた。

放火が繰り返された

 午前2時37分頃、1人の男が現場の憲兵車と黄ナンバー車(黄色は米軍人軍属の車のナンバープレートの色)のドアの窓をブロックを叩きつけて割り、他の男がドアを開けっぱなしにして外からハンドルを操作し、また他の3名の者が車の後方から車を押して付近の建物、駐車中の琉球人ナンバーの車両から離れた所に移動し、他の1人が新聞紙に火をつけて車の中に投げ入れた。完全に火が回り、周囲への延焼がないことを確認すると攻撃隊の一部は北へ、他は南へ向かい、その後さらに38回に渡り黄ナンバー車を琉球人ナンバーの車や付近の家屋に延焼しないところに集め火を放つことを繰り返した。

 群衆も北と南に分かれて攻撃隊を遠巻きにして放火を見ていた。憲兵車と米軍人車81台(オートバイ3台を含む)が焼かれた。

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