コザ暴動は「反米暴動」だったのか③ そしてコザで

 

 琉球新報は2016年12月23日付紙面で、「“噴火”の中に秩序」の大見出しに「暴動」の普遍性提示の小見出しの下、噴火の中の秩序に暴動の普遍性を考える欄を設けた。

 大阪市立大の山崎孝雄教授は「コザ暴動では『秩序ある暴動』という表現がよく用いられる。略奪が起こらなかったことや黄色ナンバーを付けた米軍車両のみを攻撃対象とし、米兵に暴力が向かうことはなかったことが主な理由だ。おとなしいと言う自己像を持つウチナーンチュが怒らざるを得なかったと言う矛盾した要素をつなぐ表現だ。圧政の象徴として黄色ナンバーを認識する基盤があり、日常的な構造的差別(暴動での)が視覚的な弁別へと即座に共有されて行った」との意見に普遍性(共通性)があるとした。

コザ市の街並み 沖縄県公文書館所蔵

 ところが放火の現場は39カ所もある。しかも1カ所10人弱の人間で整然と放火行為は行われた。移動するには車を後ろから押した。車の後ろには3人が押すスペースしかない。その上車の近くは割れたガラス片が飛び散り、受傷の危険があり、車は燃えているのだから、この危険な場所に近づくものはいなかった。教授の意見はこの事件の態様に基づかないものである。

騒乱罪には該当しない

 暴動の言葉の定義は、徒党を組み入り乱れて騒ぐ非常の事態というものである。当夜現場には1万人近い人が出ていたが、放火行為は既に述べた通り徒党を組み入り乱れた事実はない。ブロック、石、放火のための新聞紙、ガソリンが準備され、10人弱の者が冷静に周辺への延焼を防止しながら39回に亘り放火行為を行っており、流言蜚語が流れて民衆が放火に参加した事実もない。その動機は軍法会議の無罪判決に対する攻撃であり、米軍支配体制への抵抗を動機とする偶発的なものではない。

 なお、騒乱罪は、公共の平和を保護するために規定されていて、犯罪が成立するには公共の平和、静謐を害されなくてはならない。それがこの事件にはない。騒乱罪にも該当しない。

 検察庁は、この事件は10人前後の者が共同して時を異にして39回にわたり39カ所で車を壊したことで3年以下の懲役か罰金に処することが出来ると判断したが、被害者等が犯人等の処罰を求める告訴をしないことが判ったので捜査を終結した。器物損壊罪は告訴がなければ起訴できない犯罪だからである。

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高江洲歳満

投稿者記事一覧

1934年、東京生まれ。北京で育つ。終戦後、両親の故郷である沖縄に帰国。中央大学法学部法律学科卒業。米国テュレーン法科大学院修士課程修了。那覇地検、福岡地検で検事を務める。退官後は弁護士として活動。96年から米国ワシントン州シアトルでも弁護士として活動している。

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