「コミュニケーション不足」 県、クラスター公表遅れで見解
- 2021/7/3
- 新型コロナ・医療
県病院事業局の我那覇仁局長は2日、県庁で会見し、中部病院の大規模クラスター(感染者集団)の発表遅れについて、県と中部病院で互いの認識に齟齬(そご)があり、コミュニケーション不足で共通認識を持てなかったことが大きな原因だったとの見解を示した。会見には、中部病院の玉城和光院長、同病院医師で県専門家会議委員でもある高山義浩氏らも同席した。
中部病院のクラスターは、計51人(入院患者36人、職員15人)が感染し、このうち患者17人が亡くなっていたことが明らかになっている。
中部病院の玉城院長は1日の会見で、6月11日に記者会見で公表すると決めたが、病院事業局から取り止めと受け取れる趣旨のメールが来たことで、ホームページ(HP)での発表にとどめたと説明していた。
我那覇局長は会見で、「県民の皆さまと関係各位に多大な心配と迷惑をお掛けし、深くお詫びする」と謝罪した。
一方で、「1日の中部病院の会見内容は、病院事業局が承知している内容とは異なっていた。中部病院長と面談して、認識の齟齬(そご)があることを確認した。コミュニケーション不足で共通認識を持てなかったことが大きな原因だ」とも述べた。
病院事業局「マスコミに過剰に取り上げられる」
2日の会見では、県が中部病院に送ったメールの内容も公表された。その中で、県は「中部病院の状況は、クラスター公表基準は満たさないと考える。クラスターが公表で過剰にマスコミに取り上げられると、他のコロナ協力病院も努力が報われないと受け取られる可能性もあり、注意は必要。上記をふまえ、中部病院が取材に対応することを選択するのであれば尊重する」としている。
メールを送った事業局の中矢代真美医療企画監は、公表はすべきで、会見かホームページでの公表か病院の選択を尊重するとの考えだったと強調し、「曖昧な内容もあって、病院の中止という受け取りになってしまった。その認識に我々も気づかないままとなった」とした。
同席した中部病院の玉城院長は「中部病院に与える影響を考えると、もっと強く(県に)押すべきだった。この文章を見たときに、どうしても(会見を)止めないといけないのかなと受け取った。中部病院の果たす役割を考えると(情報を)出すべきだったとは思っている」と述べた。
一方、高山医師は「集団感染が発生した施設を支援してきたが、差別や偏見に苦しむ職員を数多く見ている。集団発生が起きた苦しい時期に少なからず職員が離職する様子を見て来た。私は、一律に公表するのは反対の立場」と語った。
その上で、高山医師は「中部病院は公共性が高く、公表していくべきだと思うが、基準なしに公表がなし崩し的に広がっていくのは警戒している。(マスコミが)報道することで、潜在的な差別が起きていることは理解してほしい」と強調した。
会見では、中部病院の問題を受けて新たに策定された県立病院での公表基準も発表された。同一感染経路で5人以上の院内感染を認めた場合、速やかに保健医療部の記者ブリーフィングで病院名や感染者数、重症者の状況、診療制限等の情報を公表し、当該病院のホームページ(HP)でも公表するとした。
県三役への報告は?
同日は、中部病院に関する県三役への報告について、病院事業局の説明に変転が見られた。当初、我那覇局長は「(中部病院が)記者会見をすると、(6月の)10日から11日ごろにメモというか、副知事の方に報告した」と述べていた。その後、我那覇局長は「確認したところ、メモには会見の話や死亡者数は入っていなかった」と発言を修正した。
(記事・写真 宮古毎日新聞)