~社会貢献の入り口に~高校生の「卒業記念献血」

 

 コロナ禍は医療を支える献血の現場にも多大な影響を及ぼしている。九州・沖縄8県では、移動採血車(バス)の行く先の約12%を占める高校や大学などでの献血が、去年4~11月の間で270台分中止となったことで、学生の献血が一昨年の同期間より9565人減少した。その中でも新型コロナ感染防止対策を取り、かつ学校側に理解を求めながら、沖縄県赤十字血液センターでは高校3年生を対象にした卒業記念献血を行っている。

10代の献血 平成元年から4分の1に

 血液は人工的に造れず、長期保存ができない。かつ交通事故などに限らず、がんの手術や治療などにも必要不可欠だ。しかし10代から30代の若い世代では献血者の人数が減っている。沖縄県内の10代で見ると、平成元年度には延べ約16000人だったのが、平成18年~令和元年度は約4000人台で横ばいの状況が続いている。献血未経験者にとっては痛みや血を採られる不安といったネガティブなイメージが強いようだ。一方で献血経験者からは、社会の役に立っている、立ちたいという声が目立つ。初回のハードルを越えると、継続して協力する人の数も多いようだ。

なぜ”高校献血”か

 県赤十字血液センターでは毎年1~2月、卒業間近な3年生を対象にした高校での学校献血を行っている。センター献血推進課の赤嶺廣幸(あかみね ひろゆき)さんは、コロナ禍でも今年は44校(去年は50校)で実施の協力を得られたことへの感謝とともに、学校献血の大切さを語った。

 「友達同士で参加できる環境をつくることで、献血参加への後押しとなるように、そして一度経験することで(ハードルを低くして)進学や就職をした先でも継続して協力してもらえるようにしたいと考えています」

県赤十字血液センター赤嶺廣幸さん

 協力してくれた人にはプロバスケ琉球キングスの試合チケットプレゼントなど、新たな工夫もしている。

高校生「不安だったが人の役に立ちたい」

 取材当日の2月4日は県立首里東高校で卒業献血が行われた。事前に献血の大切さや若い世代の協力者が減っているという現状を授業で紹介されたということで、「痛さや血を抜かれることに不安はあったが、人の役に立ちたいと思った」という初参加の3年生がほとんどであった。もちろん強制ではなく、約1時間の取材の間に採血車を訪れた生徒は10人余りだった。

 また「どこでどの時間に献血ができるか知りたい」という声もあった。日本赤十字社では”ラブラッド”という、献血後にweb登録した人を対象に予約などができるサイトを開設している。こうした広報も行われている学校献血が、高校生の社会貢献の入り口としてより多くの人に知られるようにと、関係者による地道な活動が続いている。

■献血Web会員サービス「ラブラッド」
https://www.kenketsu.jp

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