旅行社社長が語るコロナ禍のリアル(上)
- 2020/10/7
- 新型コロナ・医療
コロナ禍で多くの業種が影響を受けるなか、とりわけ観光立県をめざす沖縄県にとって、海外観光客の減少は死活問題となっている。昨年、293万人に上った海外からの観光客数は、今年4月からはゼロとなったままだ。
そうした状況の中、旅行者の送り出し、受け入れに直接関わる旅行社の影響は計り知れない。テーマ性のある台湾旅行に強みを発揮し、創業40年を迎えた東亜旅行社も例外ではない。開口一番「3月以降売り上げはゼロです」と現状を吐露する同社の林国源社長(66)に、旅行社の置かれた現状と課題、展望について話を聞いた。
——報道よりも早い段階で新型コロナは発生していたんですか。
「昨年11月の最初の連休時点で既に『中国武漢で変な病気が発生し死者が出ている』という情報が台湾の一部の間で流れていました。その時、沖縄から全員お医者さんのツアーをお世話していたのですが、誰もその情報を信じませんでした。3週目の連休ではさらに死者が増えていたにも関わらず、それでもフェイクだとの見方が大半でした」
——後に関係機関が正確な情報を収集し、世界保健機関(WHO)に報告書を上げたにも関わらず、それを握りつぶしたWHOの罪は深いですね。あの時に各国間で情報を共有し、地球規模で動いていればと。それにしても、台湾は新型コロナの対応が早かったですね。
「日本の行政システムと違い、適所に専門家を揃えていたことが功を奏しました。公衆衛生が専門の陳健仁副総統(当時)が蔡英文総統とともに政策全体を見渡す参謀総長の役割を果たしたほか、衛生福利部長(厚生相)で中央流行疫情指揮センターの陳時中センター長が司令塔として最前線に立ちました。この人は指揮を執りながら、毎日午後2時に記者会見を開き、記者の質問に丁寧に答えました。どこかの国のリーダーのように「指摘・批判は当たらない」「まったく問題ない」と質問を遮断するようなことはありませんでした。会見から発せられる言葉に人々は癒され、それは「精神安定剤」と呼ばれるほどでした。
沈栄津経済部長(経済相=当時)は、マスクの国内生産を指揮しました。もちろんマスクアプリを開発した「天才IT大臣」の異名を取るオードリー・タン(唐鳳)氏も一躍有名になりました」