祈りと願いを舞台化した神楽の舞 烏丸ストロークロック公演「祝・祝日」
- 2021/6/13
- エンタメ・スポーツ
無心になる「舞の構造」
俳優たちが生身の体で取り憑かれたように舞う姿を目の当たりにすると、囃子の音色やリズムも相まって、非日常化した空間の中でいわゆるトランス状態になったような感覚に陥る。しかも同じ動きを反復しているように見える俳優たちの舞は、実は単なる繰り返しではなく振り付けそのものや動きの回数が微妙に違っているため、単調さを感じることはない。
「我々がベースにしているのは、元々は『野生を取り戻す』ための山伏がやっていた神楽なんです。おそらく舞っているうちに舞手が無心になるように仕向けられていると思うんですよね」と柳沼さん。
舞台に立って実際に踊っている俳優の澤雅展さんは「次々と振り付けがやってくるので、考える暇もなくどんどん熱中していく感じです。繰り返しじゃない部分も多くて、思考する余地なく体を動かしている状態が“神がかり”ということなんじゃないかなと思います」と話す。同じく俳優の坂田光平さんは「先がめちゃくちゃ長い階段を延々と登っていくような感じでしょうか。ものを考えられないくらいに必死になるような舞の構造になってるんだと思います」と語った。
コロナ禍の今こそ必要な表現の場
世の中のほとんどの人々が多大な影響を受けているコロナ禍の現在、演劇の世界もまた厳しい状況にある。公演ができず首が回らなくなり、全国各地で次々に小劇場が潰れてしまっている。そうした中で、銘苅ベースのような表現できる場所があることが「気概を持って芸術文化に取り組みたい気持ち」をもって沖縄での公演を決断する大きな動機となったと柳沼さんは語る。
「我々も含めた色んな劇団が公演できる舞台がある場所はとても大事です。今こういう時世だからこそ、生身の人間が動いている演劇という空間で日常とは違った高揚感を味わえる小劇場が必要なんだと感じます。こうした形の興行を続けていくことは難しいですが、でもやらなきゃいけないことだと思います。だから、沖縄も含めて全国でもっとたくさんの人たちが舞台芸術に触れ合う機会を作っていきたいと思っています」