FC琉球”新エンブレム問題”、現行残す方針の2案を提示 「白紙撤回」求める声も

 
リブランディングにおけるエンブレムやクラブカラーなどについて説明する琉球フットボールクラブの倉林啓士郎社長(左奥)=3日、那覇市の沖縄県体協スポーツ会館(長嶺真輝撮影)

 サッカーJ3のFC琉球が3日、10月26日に行われたリブランディングの説明会で発表された新エンブレムなどに対してサポーターらから多くの批判の声が挙がった事を受け、再説明や意見交換をするためのサポーターミーティングを那覇市の沖縄県体協スポーツ会館で開いた。サポーターら約40人が参加し、会の様子は動画サイトで中継された。

 10月の説明会の時点ではリブランディングの中身について「決定事項」としていたが、今回のミーティングに出席した琉球フットボールクラブの倉林啓士郎社長は「何も決定していない」という前提を示し、エンブレムの方向性についてはA案とB案の二つを提示した。いずれも2024年シーズンは現エンブレムを残す内容となっており、クラブ側が譲歩した形だ。

 リブランディングに向けてはクラブからサポーターらに事前の情報共有がほぼなかったため、参加者からは意見交換の場が設けられた事に対して一定の評価をする意見が多く挙がった。

 一方、新エンブレムに対しては「見た瞬間に全然現在のエンブレムを引き継いでる感じがしない」など依然として批判的な意見が多く、「白紙撤回」も視野に入れて検討することを求める声もあった。

事業展開に必要な「視認性」と「拡張性」

参加者の質問に答える倉林社長

 倉林社長は会の冒頭で「チームを長く愛していただいているサポーターの皆様と対話をする機会を設定できなかったことを反省しております。様々な事情でなかなか時間を取れず、今年のチーム創設20周年に間に合わせなければという焦りもあり、ひとえに申し訳ないと思っています」と深く謝罪。10月の説明会後に実施したリブランディングに対するアンケートには443件が集まり、寄せられた声を念頭に再説明と意見交換を進めた。

 最も多くの声が寄せられた新しいエンブレムと、その中央部分の柄を抜き出したシンボルマークについては「沖縄らしさがない」「現エンブレムにあった重厚感が失われてしまった」などの意見が多かったという。新エンブレムは向かい合う2体のシーサーや琉球王国を象徴する王冠など現エンブレムにある要素を引き継いでいるが、よりシンプルな構図となっている。

 倉林社長は現エンブレムは「今後成長していくために必要な企業とのコラボレーションやプロモーションといった事業面を考えると、良い悪いは別にして、要素が多く視認しづらい。複雑で、使いづらさがあります」と説明。その上で、新エンブレムは「デザインの機能的な狙いは2点あり、1点目は認識しやすく記憶に残る視認性。2点目はデザインとして展開しやすい拡張性です」と述べ、チラシや屋外広告で目に付きやすく、さらに様々なグッズ展開などにも活用しやすいという利点を挙げた。

「アイデンティティマーク」にするか、1年延長するか

現在のエンブレムを「アイデンティティマーク」とするA案

 ただ旧エンブレムに対して深い愛着を感じているサポーターが多く、倉林社長は「曖昧な共存の仕方ではなく、皆様からのご意見を頂戴した上でクラブとしても正式に役割を与え、残すべきと感じております」と言及。2024年シーズン以降の活用法については、クラブ内で検討した二つの案を提示した。

 「A案」では新しいエンブレムとシンボルマークに加え、現エンブレムを「アイデンティティマーク」という位置付けで共存させるという内容だ。複数のアイテムを展開するようなグッズでは両方の柄をあしらった商品を提供し、両方とも大旗で掲げることも歓迎する。メモリアルなイベントでは現エンブレムを使用するなど、状況に応じた使い分けを想定する。 

エンブレムのリブランディングについて1年延長するB案

 「B案」はリブランディングのプロジェクト自体を1年延長するというもの。来年のタイミングでのエンブレム変更は撤回して現エンブレムを新しいチームカラーに統一した形で使用し、「FC琉球OKINAWA」という新チーム名称や新しいロゴ、シンボルマークのみ先行してグッズやコミュニケーションツールに活用する。エンブレムについてはオープンな形でサポーターらと対話を重ね、2025年以降のシーズンでの在り方を検討していくという内容だった。

「象徴変えるの良くない」「J1行ったら着けたくなる」

経営陣とサポーターが意見交換したサポーターミーティング

 意見交換の時間では、エンブレムの変更に対する賛否そのものも含めて様々な声が挙がった。以下は変更に否定的な意見である。

 「来年使おうとしているシンボルマークを一回白紙に戻して、みんなで作り直そうって言った方が20年目の新しいFC琉球らしんいじゃないかと思います」

 「チームは経営陣もスタッフも選手もいろんなものが変わるけど、一つだけ残っていたのが今のエンブレムなんです。クラブを象徴するものを簡単に変えるのは良くないと思います」

 変更を容認し、クラブが新たな案を提示をしたことを評価する声もあった。

 「このマークを使うようになってトントンとJ1に行ったら、みんなこのマークを着けたくなると思う。A案、B案を出している時点で会社の中で熟考していただいているのは伝わるし、サポーターともっと話していきたいという姿勢も感じられます」

 ミーティングの最後、倉林社長は「白紙撤回という方向はクラブとしてなかなか難しい選択肢かと考えています。A案、B案についてはここで結論を出すことではないし、出ないと思っている。ただ近日中に決めないと来年度のユニフォームがないという状況になるので、検討していきたいと思います」と引き続き協議を重ねることを説明した。

 さらに「来シーズンもこういう機会を設けながらブランディングについて、クラブの未来について皆さんと一緒に話し、5年前のようにJ3で優勝してJ2に昇格できるように頑張っていくのでよろしくお願いします」と挨拶し、会を締めた。

 サポーターミーティングではその他、クラブカラーの「ベンガラ色」が今シーズンより明るみを増すことや、人気ファッションブランド「#FR2(エフアールツー)」とのコラボレーションなどについても改めて説明と意見交換が行われた。


長嶺 真輝

投稿者記事一覧

ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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