沖尚、春のセンバツ有力候補に!劇的サヨナラ勝ちで高校野球九州大会4強入り

 
サヨナラ勝ちを収め、喜びを爆発させる沖縄尚学のメンバー=10月26日、コザしんきんスタジアム(以下、野球雑誌「ホームラン」提供)

 来春の第95回選抜高校野球大会(春の甲子園)の出場校を決める参考資料となる秋季九州大会(第151回九州大会)は26日、沖縄県内で準々決勝4試合を行い、コザしんきんスタジアムでの第2試合に臨んだ沖縄尚学(沖縄1位)が明豊(大分1位)に3-2で劇的なサヨナラ勝ちを収めた。九州のセンバツ出場枠は4校であり、沖尚が有力候補の一校となった。次戦は28日午後1時から、同スタジアムで海星(長崎2位)と決勝進出を懸けて準決勝を行う。

 秋季九州大会で県勢が4強入りしたのは2014年の糸満以来、8年ぶり。糸満は翌2015年の春のセンバツに出場した。

 コザしんきんスタジアムの第1試合で長崎日大(長崎1位)と対戦したウェルネス沖縄(沖縄2位)は、4-11で七回コールド負けを喫した。

サヨナラ打の佐野主将「楽な気持ちで打てた」

九回裏、打席に立って心を沈める沖縄尚学の佐野春斗主将

 九回裏、スコアは2-2の同点。1死二塁というサヨナラ勝ちの好機で打順が回ってきたのは、身長165センチとチーム一小柄な9番・佐野春斗主将だ。続く1番・知花慎之助への厚い信頼から「後ろに知花がいるので、『自分がアウトになってもいいから』という楽の気持ちで来た球を打ち返してやろうと思ってました」とリラックスした状態で右打席に入った。

 初球のボール球を冷静に見送った後の2球目。インコース寄りの直球を迷わず引っ張った。感触は「舞い上がっていて、覚えてないです」。鋭い打球は三塁線に落ち、二塁ランナーの東恩納蒼が悠々とサヨナラのホームイン。飛び跳ねたり、ガッツポーズをしたりしながらベンチから飛び出した沖尚メンバーが、喜びを爆発させながら2人を手厚く迎えた。

 この日の自身初安打が殊勲の一打となった佐野は「新チームになってから競った展開は少なかったので、こういう試合を勝ち切れたことは大きな成長につながると思います。監督からは『やるべきことに集中しろ』と言われていたので、それはできたと思います」と満足げな表情を浮かべた。

エース東恩納 粘って2試合連続の完投

完投した沖縄尚学の東恩納蒼投手

 試合は序盤から沖尚ペースだった。二回と四回に東恩納が2打席連続で適時打を放ち、2点を先行。エースとして先発投手も務めた東恩納は「ボールが高めに浮いていた」と本調子ではなく、MAX145キロの直球もなかなか球速が上がらずに毎回のように走者を背負いながらも、無失点を続けた。

 しかし五回表、1死一塁の場面で明豊の代打・石田智能に高めのチェンジアップを右スタンドに運ばれ、同点。それでも「引きずることはなくて、0-0の気持ちで投げ続けました」という東恩納は、その後も変化球を巧みに使いながら打たせて取る投球を続け、1点も追加点を許さずにチームを勝利に導いた。

 初戦に続いて中1日での2試合連続完投となり、「エースとしてしっかりマウンドで投げ抜けたのは良かったです。ここを勝ち抜かないと上にも行けないので。マウンドを任されて、『監督に期待されている』という気持ちで楽しみながらやってます」と控え目な笑みを浮かべた。センバツ出場に対する思いを問われると、「九州の準決勝、その次の決勝もあるので、センバツだけでなく、(優勝校が出場できる)明治神宮大会への切符も掴みたいです」と語り、目の前の試合に全力で臨んでいく姿勢を示した。

 明豊とは因縁もあった。3年前の秋季九州大会でも準々決勝で当たり、九回表に一挙4点を奪われて大逆転負けを喫した相手だったことから、比嘉公也監督は「前回は八回まで勝っていて、勝ちゲームを逃した。あのゲーム以降、チームとして終盤に粘れない展開が続いていたので、今日の勝利を機に終盤に強いチームになってほしいです」と期待した。

ウェルネス、投手陣が崩れてコールド負け

六回表、適時二塁打を放つウェルネス沖縄の大濵安綺

 一方のウェルネス沖縄。二回表に長崎日大の失策や9番・新城琉愛の適時打で2点を先制したが、守りでは先発の上原律己の制球が定まらず、四球や暴投が多く二回に1点、三回に2点を奪われて逆転された。

 それでも六回表、1死一、三塁から5番・大濵安綺が左中間を破る適時二塁打で走者を一掃し、逆転に成功。しかし、継投した投手陣が最後まで安定感を欠き、六回と七回に連続で4点を失ってコールドで敗れた。

 悔しい負け方となったが、九州大会初出場ながら初戦を突破し、ベスト8まで駒を進めたウェルネス。主将の宜野座凜は試合後、保護者ら応援団を前に「結果で期待に応えられず、申し訳ないです。冬にしっかり練習し、甲子園で勝てるチームをつくっていきます」と涙ながらに決意を語った。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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