沖縄黒糖なぜ8離島だけで生産? 官民で目指す在庫一掃販路拡大

 

黒糖生産が8島に絞られた経緯

 もともと沖縄県内での黒糖生産は、家内工業的に各地で行われていたが、今や県内離島の中でも規模の小さな8島が生産を担うことになった経緯としては、国が行う砂糖の価格調整制度が関係している。

 分蜜糖(白糖など)は国民にとっての必需品との見方から、国は砂糖の価格調整制度で、砂糖やサトウキビ、てん菜の生産者を保護してきた。輸入品に高水準の調整金を課し、それを国内生産者への交付金に充てるものだ。

 国の補助を受けるためには一定以上のサトウキビやてん菜の作付面積や生産量を確保できることが条件となったため、比較的生産農家が多い地域の製糖工場では、交付金の対象である分蜜糖を生産するようになった。

 条件に満たずに交付金の対象外となった小規模8離島では、島の重要産業としての黒糖生産が続けられ、関連産業は沖縄振興の一環として支援されることとなった。

 必需品との見方がある分蜜糖(白糖)と違い、嗜好品との見方が強い含蜜糖(黒糖など)には価格調整制度が働かないため、黒糖業界には分蜜糖と同様の支援策を求める声も根強い。

沖縄県黒砂糖協同組合ウェブサイトより引用

島ごとの個性活かした味の追求

 これら8島の味は、生産されるサトウキビの品種構成や、それにより長年築き上げてきた「島の味」を壊さないようにと努力する職人の技によって保たれてきた。

 これにより、味の違いにこだわる菓子メーカーなどは、適した島の黒糖を原料にしていることも多い。ブルームーンパートナーズによると、全国的に有名な和菓子屋「とらや」の羊羹には30年間以上も西表島産の黒糖を使用し、人気タピオカドリンクチェーン「ゴンチャ」は多良間島産の黒糖を一部使ってシロップを作っている。

 8島それぞれで個性ある黒糖が生産されているという幅の広さが、沖縄黒糖の大きな強みとなる。仲座さんは「沖縄の黒糖にはものすごく可能性や魅力があります。全国の人に知ってもらって、サトウキビ農家の収入向上にもつながれば」と話す。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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