ゼロエミッション宣言どう実現? 沖縄電力トップに直撃

 
本永浩之沖縄電力社長

 菅政権が2050年までに地球温暖化ガスの排出量をゼロにする、いわゆる「カーボンニュートラル」を打ち出し、各企業で脱炭素への取り組みが急速に進む。電力業界では大量のCO2(二酸化炭素)を排出する石炭火力発電からの撤退が世界的潮流となり、イギリス政府にいたっては2024年10月1日までに石炭火力全廃を約束した。

 そうした中、注目されるのが、石炭火力が電源構成の6割以上を占める沖縄電力である。その沖縄電力が全国の電力会社に先駆けて「ゼロエミッションへの取り組み」を宣言した。2050年までに「ゼロエミッション(=CO2排出ゼロ)」は本当に可能なのか、その道筋を同社の本永浩之社長に聞いた。

――昨年12月に電力他社に先駆けて「ゼロエミッションへの取り組み」を発表しました。

本永 本土と違い沖縄には水力発電も原子力発電もなく、CO2フリーの電源が足りません。本土と比べて厳しい状況にあるのは事実です。そうした背景から、我々としては将来にむけていち早くCO2削減にしっかり取り組まなければならないとの思いが強くありました。菅総理が2050年までのカーボンニュートラルを宣言したこともあり、我々としてもいいタイミングということで、去年12月に長期の方向性として発表させていただきました。

――具体的に「ゼロエミッション」をどう実現しますか。

本永 我々のゼロエミッションへの取り組みは2つの大きな柱を掲げています。再生可能エネルギー(再エネ)の主力化と、火力電源のCO2排出削減です。また、沖縄全体をCO2フリーにするためには需要側の取り組みも大切で、電化の促進もやっていくべきだろうと思っています。

 再エネの主力化ではまず2030年までのターゲットとして、いまの設備に加えてプラス10万㌔ワットの再エネ電源を増やしていく。規模で言えば、いまの設備の3.4倍になります。具体的には太陽光発電で5万㌔ワット、そして風力発電で5万㌔ワット。太陽光については、沖縄には十分な土地がなく、メガソーラーを次々に造るわけにもいかない。

 そこで我々としてはPV-TPO事業(太陽光発電の第三者所有モデル)「かりーるーふ」を進めていきます。いわゆる屋根貸しですね。太陽光発電システムをお客様の屋根に無償で設置させていただいて、それに蓄電池もつけさせていただく。こうして太陽光発電を普及させ、5万㌔ワットまで増やしていく取り組みをグループで進めています。

太陽光新事業の大きな反響

――「かりーるーふ」は4月にスタートしていますが、反響は?

本永 想定以上の反響ですね。最初に募集したところ50件の申し込み枠が10日で埋まってしまいました。まずはこの応募されたお客様の枠をしっかりこなそうということで一時的に新規申し込みはストップしていますが、今後は年間200件を目標にして、家庭だけでなく自治体とも連携しながら事業用でも進めていきます。

――この事業は新規参入のいわゆる「新電力」との競争においても有効ですか?

本永 はい。太陽光パネルの無償設置は他社にもありますが、蓄電池をつける「かりーるーふ」は一つの差別化になると考えています。お客様にとっても手軽に脱炭素の電源が使えることになりますし、蓄電池は災害時のレジリエンスにもなります。そこにオール電化のエコキュートやIHヒーターを導入すれば、新しい電化への取り組みとしてもアピールできます。

 ゼロエミッションに向けては電源側の取り組みも必要ですが、「かりーるーふ」であれば、需要側の新しい電化スタイルとして普及していけると思っています。電源側、需要側双方で提案ができることも、新電力との単なる価格の比較ではない差別化につながってくるのではないでしょうか。

――では、風力発電はどのように進めますか。

本永 風力で5万㌔ワットを達成するには、台風という沖縄固有の課題をクリアしなければなりません。台風による暴風に耐えうるような風車を導入する必要があります。これが世界中探してもなかなか見つからない。風力発電のメーカー側とあらゆる調整を尽くし、なんとか導入できる形にしたいと思っています。

 洋上風力の導入に向けた取り組みも国内各地で進められていますが、沖縄では島全体が珊瑚礁に囲まれており、このような立地環境を鑑みると、なかなか難しいと考えています。基本的には陸上での風力発電を展開していくことになります。

 沖縄において、台風時には、風車のブレード付近の高さにおける最大瞬間風速が毎秒90㍍、100㍍を超える可能性があります。導入拡大に向けては、そうした暴風にも耐えうるような技術のブレークスルーが必要不可欠です。なお、設置場所については本島や離島において候補地の検討を進めています。

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